思わぬ同居人 47
イタズラのつもりでしたキスではない。
あのよく動く口から出た言葉に、カチンと来ただけじゃない。
会場に入った時に、あのポン・ジュングがしつこくハニに自分の気持ちを込めた歌を歌いながらアピールしているのにムカついていた時、先生がハニのせいでオレがテハン大では無くてパラン大になったと言ったことから始まっていたのかもしれない。
自分の事は自分で判っていたし、感情のコントロールをする事が出来る人間だと思っていた。
「スンジョ、時間が近くになったから行くわよ。」
「面倒だ!」
「だめよ、せっかく予約を入れたのだし、今日行かないといつ行くのよ。入学式前日は予約が入れられなかったのよ。」
いつもは美容院に行く時にこんな風に急かされるわけでもなく、ウンジョと二人で行っていたのに、お袋が自分が行った時に予約を入れて来るのが気に入らない。
「この間ね、ハニちゃんと言ったのだけど、ハニちゃんは緩くカールさせてもらってとっても喜んでいたわ。今度から私の行っている美容院に変わろうかなって・・・・・」
「よかったな。念願の娘と一緒に美容院に行けるし。」
「まっ!捻くれものね。」
「お客様、シャンプー台へお願いします。」
「シャンプーはいつもしませんよ。」
「今日は、お母様のご希望でカラーとパーマが入っています。」
「カラーって、まさかとんでもない色にしたりしませんよね。」
「お色見本をお持ちしますね。」
美容師は色見本を持って来ると、グミが決めたヘアカラーのサンプルを指差した。
カラーが綺麗に入りそうな髪だから、少し赤めの色に仕上がる方がいいかと聞かれても。
「どうでもいいです。」
「どうでも・・・あの・・・お客様が決めて頂かないと・・・・困ります。」
この美容師に当たっても仕方がないが、子供の時にお袋のおもちゃにされて、大学生になる今もお袋の思い通りの髪型にさせるのか?
「あの・・・お母様がこの色でと・・・・」
「なら、それで・・・・」
「その次はパーマを・・・・」
「適当に。」
「適当・・・・お母様に聞いて来ます。」
最初っからお袋はオレの髪型を決めていたのか、美容師が確認に行くと直ぐに戻って来た。
シャンプー台に行ったり、またもどったり。
何の罪のない美容師にオレは当たっている訳じゃないが、鏡越しにオレの顔色を伺うこの人に申し訳ないと思った。
ハニが刺激的な大学生活を保障してくれるそうだが、お袋の思い通りになりそうな気配もあった。
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