思わぬ同居人 48

卒業式が終わって大学の入学式まで特別やることも無く、一日中本を読んでいる気持ちにもならない。 

ハニのようにバイトでもしてみるのもいいかもしれないが、してみたいバイトもないし目的も無くバイトをする気はなかった。 


「またチキンを食べているのか?太るぞ。」 

「だ・・・大丈夫・・・・」

 オレをチラッとも見ないで、バイト先のチキン屋から貰って来た時間経過のチキンをハニは毎日食べている。 

「お兄ちゃん、ハニでも役に立つよね。」

 「どういう意味よ!」 

「だってここの<太陽チキン>って美味しくて人気があるじゃないか。こんなに毎日食べられるのなら、僕は嬉しくて仕方がないよ。お兄ちゃん、冷蔵庫にまだたくさん入っているよ。」 

「お兄ちゃんは遠慮しておくよ。」 


ハニのチキンのせいで、ウンジョが最近ぽっちゃりとして来ているのは気が付いていた。 

まだ小学生だし、成長するから心配は特にしていないが、最近は子供の肥満や成人病も増えて来ている。

 「はい、スンジョの昼食よ。」

 グミがサラダボールとコーンスープをスンジョの目の前に置いた。

 「パンか、ご飯はないの?」

 「いらないでしょう・・チキンをこれだけ食べれば、パンもご飯も食べられないじゃない。」

 「しかし・・・・」

 ハニが持ち帰ってきたチキンで作ったサラダだった。

 野菜が多いのかチキンが多いのかわからないが、毎日チキンのサラダが昼食では食べ飽きるし、お袋もハニが可愛いから貰って来てくれてありがとうと言っている。

 サラダだけじゃなく、お袋は色々な料理に代えてはいるが・・・・ 


「胸焼けしそうだ・・・・」 

「ゴメン・・・」

 「贅沢は言わないの!時間が経った物は店頭に出せないし、揚げ過ぎたのも出せないし捨てるのはもったいないじゃない。」

 チラチラとオレを見ているハニに、見返しているオレ。

 オレが見返すたびに顔を赤らめているハニ。 

「オレの口に何か付いているか?」 

「な・・・何も・・・・」

 謝恩会でハニにキスをしてから、やたらとアイツはオレの口元を見て来る。

 少しからかい過ぎたか。

 口元は見るが、オレの顔をあれから一度も見ていないハニは、オレを忘れて大学に行ったら素敵な

人を見つけると言った時の勢いはなかった。 


「ところでスンジョ・・・頭にタオルを巻いたりしたら、せっかく大学生らしくしたのに意味がないじゃない。」

 「何が大学生らしいだよ。髪の毛まで染めさせるし、パーマまで掛けるし、早く元に戻したいよ。」

 そんなに簡単に髪の色も戻るわけでもないし、パーマも取れるわけでもないが、美容院から逃げなかったオレも悪いし、逃げるほどガキでもないから我慢をしたが、大学生になるのに母親が自分の思うようなスタイルにさせられては、ささやかな抵抗だ。 


「クローゼットに入学式に着るスーツを入れておいたからね。ハニちゃんは気に入ってくれたかしら?」 

「ええ・・ありがとうございます。大学が受かった時におじさんからコートをいただいたのに、入学のお祝いにスーツと靴まで買っていただいて。」

 スーツを入学祝に買ったって? オレのスーツは判るが、何でハニの分まで買うんだよ。 

また何か余計な事をしたわけじゃないだろうな・・・・・ 


遅い朝食を終えると、スンジョは読み掛けの本を読むために、部屋に戻ってグミが入れておいたと言うクローゼットの中のスーツを確認した。

 黒か紺のスーツなら何も思う事が無かったが、白いスーツが何かグミに魂胆があるような気がした。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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