あなたに逢いたくて 82

「ハニちゃん、温かいココアを飲んで、身体が温まれば心も落ち着くわ。ハニちゃんは笑った顔が一番似合うのよ。それとね、ペク家を出て行ってからの話は、全部ギドンさんから聞いているわ。」

グミの言葉にハニは、ソウルを離れる時にハニが嫌なら何も言わないと言った父ギドンの方を見た。

「ハニ・・スンハは、パパにとって可愛い孫だけどハニを実の娘の様に可愛がってくれたおばさんやおじさんにとっても孫じゃないか?自分の子供が生んだ可愛い孫の事を秘密には出来ないよ。内緒にしていたが、三年前におばさんとハニが会った時に全部話したよ。」

グミもスチャンも何も言わず、五年間独りで子供を産んで育てたハニにほほえんだ。

「おばさん・・おじさん・・・ごめんなさい・・・黙っていて。スンハが出来た時、スンジョ君がお見合いの話が進んでいたから・・・・・」

グミは、ハニを抱きしめて

「あの時は皆が辛かったわよね。でも、私達よりハニちゃん、貴女が一番辛かったと思うの・・・スンジョが結婚しようと言ったのに、それからすぐに勝手にお見合いをしてしまって、本当に貴女に酷いことをしたと思っているの・・・・よく頑張ったわね、スンハちゃんをここまで独りで大きく育てるのも大変だったでしょ?」

ハニは母親のように慕っていたグミから、温かくて優しい労いの言葉を掛けられて、幼子のように泣きじゃくった。

スンジョが、治療の終ったスンハと一緒に病室に入って来た。

スンハの顔色もパランに搬送されてきた時よりも顔に赤みが出て来て、痛み止めが効いているのかスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。

「スンハちゃんのお母さん・・・それに御家族の皆さん、安心してください。検査の結果、頭部にもどこにも異常は見られませんでした。ペク先生が偶然に見ていた時で、お話を伺いましたら・・・・・すばらしい身体能力のお子さんのようで、こんなに小さいのに身体を丸く丸めて落ちたようです。本来なら、高い位置からの落下で、大怪我になる所でしたが、全身打撲だけで済んだのが奇跡のようです。暫く痛みが続くと思いますが、前進の腫れが引いたら退院できます。」

ナ医師からの診察の結果に、ハニ達は皆安心した。

「ハニちゃんに似て、我慢強い子なのね。あんなに小さな赤ちゃんだったのに、こんなに大きくなって・・・・・・可愛い顔で気持ち良さそうに寝ているわね・・・・・・」

「お袋・・・・お袋はスンハの存在を知っていたのか?」

「スンジョに言ったでしょ。ハニちゃんがソウルを立つ時に姿を見かけたって・・・・その時に、お腹をかばうしぐさをしているから、きっとお腹に子供がいるのじゃないかって・・・・・」

「おばさん・・・・・・・」

スンハを愛しそうに眺めるグミは、スンジョにいつスンハの存在を知ったのか話すことにした。

「本当は、三年前にギドンさんに聞いたの・・・・パパやウンジョもその後にすぐに話したの。でもスンジョ、貴方だけには言わなかったわ。なぜだか判る?判らないでしょうね、ハニちゃんが苦労して一人で子供を産んで育てている苦労を知ったら、苦労してでも自分でハニちゃんを見つけさせたかったの。若い女の子が結婚もしていないのに一人で育てる決心をするのは並大抵の覚悟じゃ出来ないわ。貴方達は結ばれるべきして結ばれると私は思っていたから、どんなに時間が掛っても絶対に出会えると信じていたの・・・・・」

結局スンジョはグミに反発していた時もあったが、母親の思いは誰にも負けない物だということを知った。

ハニとスンハも、誰にも入れない繋がりがあると思った。

「ハニ・・・スンハの入院手続きをしないと。オレはまだ戸籍上は親になっていないから、ハニじゃないと出来ない。」

スンジョの案内で、ハニはスンハの入院手続きをした。

スンジョが廊下を歩くと、顔見知りの看護師たちが挨拶をする。

ここでスンジョが医師として働いていたのだと思うと、いつかパラン大で仕事をしているスンジョを見ていたいと思ったことも現実だと思う様になった。

スンハが運ばれて来た時に、自分の娘と妻と話していた事は、あっという間に病院中に広まり、好意的な目とそうではない目が自分に注がれている事が、懐かしくも思えた。

「スンジョ君がいなかったら私・・・・怖くて・・・怖くて何も出来なかった。」

ハニはホッと一息吐いて、いつの間にか夕焼け空になっている窓の外の景色を見ながら、硝子に映るスンジョに微笑んだ。

スンジョはハニの後ろから腕を廻して、ハニの首筋に顔を埋めた。

「怖かったのはオレの方だ・・・・・・。自分の子供・・・スンハが血を流して地面に叩きつけられて・・・・まだ何も知らないままどうにかなるのじゃないかと思ったら・・・・・・・ハニが傍にいなかったら・・・・・・ハニが傍にいてくれたおかげで、自分を取り戻せたんだ。ありがとう・・・ハニ。」

「スンジョ君・・・・・・・」

ハニはスンジョのほんの少しの弱い部分を自分が守れたことが嬉しかった。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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