思わぬ同居人 54
「やっと摑まえる事が出来たよ。」
ギョンスがスンジョの横に腰かけると、ハニはスンジョに背中を向けた。
「どうかしたのですか?」
「どうかしたって・・・・判っているじゃないか。スンジョ・・・テニス部に入るよな?」
背中を向けたハニの耳がこちらの会話を、盗み聞きをしている。
ハニに聞こえなければいいと思っていても、ギョンス先輩の声は大きい。
聞きたくなくても耳に入って来るギョンス先輩の話を、ハニはチャンスだと思って聞くのは間違いがない。
「入りませんよ。ちゃんと先輩に断ったじゃないですか。」
ハニ・・早く向こうに行ってくれよ。
部活に入るのならオレと同じテニス部じゃなくていいから、自分で本当に興味があるところに入れよ。
「もういいですか?次の授業が始まるので・・・・・」
ハニの耳がダンボのように動いているのに気が付いた。
やっぱり会話の全部を聞いているのだ。
「まぁまぁ・・・・そう言えば・・・・高2の時だったか?ほら・あの赤い靴シリーズの・・続きのDVDを持っているんだけど、見たいだろう?」
それを引き合いに出すのですか?
「判りましたよ・・判りました。入りますけど、あれは先輩が強引に家まで連れて行って見せたじゃないですか?」
「まぁまぁ・・・・堅物のお前がそんなエロいDVDを見たのを知ったら、両親も先生たちも驚くだろうな。」
「判りましたから、もうその話で脅迫をしないでくださいよ。 」
『あのDVDを、先輩は何年も親に見つからないようにしまい込んでいたことに驚く。ギョンス先輩に脅迫の如く誘われて、オレはテニス部に入る事になった。過去に見たDVDを隠すことなく口にした先輩・・・・テニス部に入るための条件を付けさせてもらいますからね。』
何も知らずにスンジョがテニス部に入る事を聞いたハニは、やっと聞き出せた情報に小さくガッツポーズをしていた。
「スンジョ、あなたもギョンス先輩に誘われて、テニス部に入る事になったのね。」
ユン・ヘラ、君も入ったのか。
「ギョンス先輩に無理やり・・半ば脅迫的にね。だから条件を付けて入ったよ。」
「条件?」
「あぁ・・・特別部員・・・・」
キャプテンが新入部員を他の部員に紹介をするから集まるようにと声を掛けると、スンジョとヘラはテニス部の部室からミーティングルームに移動をした。
何人の新入部員が入ったのかは、スンジョにもヘラにも関係が無かった。
ふたりは他の部員とは力量も違っているから、すでに今年度の新人戦の選手とされていた。
「アンニョン!」
能天気そうなその声に、スンジョはやっぱりと心の中で呟いた。
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