思わぬ同居人 55
「おまえ・・・・」
やっぱり聞こえていたか。
ギョンス先輩の大きい声なら、背中合わせのベンチに座っていれば聞こえるだろう。
「あなた・・テニスはしたことがあるの?」
「一度も・・・」
「一度も無くて、このテニス部に入ったの?」
「あぁぁ、バドミントンならやったことがある!」
テニスもバドミントンもラケットを使う事は同じだけど、パラン大のテニス部は他の大学のように遊び半分では付いていけない。
「よくそれで入部する気にはなったわね。」
このユン・ヘラはハニを小馬鹿にすることを楽しみにしているのか?
ハニをからかうのは、オレだけで十分だ。
「だって、この先輩が初心者でもいいよ。手取り足取り親切に教えるからって・・・・」
随分と先輩は甘い言葉でハニを誘ったんだな。
「今年はわがトップスピンに入りたいと言う新入生が少ないからな。自らトップスピンのドアを叩いてくれる人は大歓迎だから。」
ギョンス先輩・・・責任とってハニを教えてくださいよ。
ハニの判断力は平均以下ですから。
「私、この先輩好きよ。豆腐みたいに物腰が柔らかくて、優しくて・・・・どこかの誰かと大違い。」
思わず吹き出しそうになるお前の発言。
隣にいるヘラがオレの顔を見て、笑っているのが判る。
ギョンス先輩がラケットを持つとどうなるのか、お前が知った時にどんな顔をするのかが楽しみだよ。
家に帰ると、早速ハニはグミにテニス部に入部した事を話していた。
学校であった事を毎日グミが聞き出すと、ハニがそれに応えると言うのがいつもの事。
よっぽど嬉しかったのか、ハニはグミに誘われてスポーツショップにラケットなど一式を買いに出かけた。
グミにしたら、可愛い娘の買い物に付き合うのなら、帰りに何か美味しい物を食べるだろうかと憧れていた娘とのショッピング。
「お夕飯は遅くなるから・・・お腹が空いたら適当に!」
ハニとのショッピングに行くために母が用意した冷めたおかずを見て、ハニが来てからグミが自分たちに絡んで来なくて楽なようでもあったが、こうしてハニと出かける機会が増えて、冷凍のおかずを食べる事も増えて来た。
テニスウエア上下とシューズにラケットだけでも結構な買い物なのに、グミは不必要なほどに何着もウエアを買い込んで来た。
これを袋から出しては次から次へと着替えて、ファッションショーのように披露をしていた 。
まぁ、精々とおままごとや夢を見ているような今を楽しんでいろよとしか言えなかった。
明日から始まる本格的な練習に、ギョンス先輩のせいで逃げ出す人が必ず半分はいると思う特訓を楽しめよ。
スンジョはテニスウエアを着て、ヘラやスンジョを叩きのめすと言いながらラケットを振っているハニを面白い物でも見るようにソファーに腰かけて眺めていた。
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