思わぬ同居人 57
ギョンスの変貌に驚きもせず、スンジョは平然とした顔ですべてのサーブを簡単に返した。
「すごい・・・・」
「さすが、高校ナンバーワンだ。」
一本も失敗せずにコートに返す、余裕たっぷりのスンジョに、ギョンスは人が変わったようにボールを叩きつけるように打っていた。
「次!!!次は誰だ!」
「ハニ・・・君だよ・・早く行った方がいいかもしれない。」
「ちょっ・・・ちょっと・・私ラケットもまともに持てないのに、返すことが出来るわけないじゃない。」
その場から後ずさりしていても、逃げ出せることが出来ない。
「ハニ、行けよ。」
「ス・・・スンジョ君が、ギョンス先輩を怒らせたんじゃない。」
「なぁにを、しているんだぁ~~サッサと前に出んかぃ!」
「早く行って来たら?私には優しかったから、ハニにも優しく打ってくれるんじゃないの?豆腐のような先輩でしょ?」
ラケットを持つと人が変わる事を知っているのは、上級生とオレとヘラだけ。
全くテニスをした事のないハニが次だと判っていても、オレは今まで一度も負けた事が無いから、負け方を知らなくて悪いな。
ギョンスの打ち放つボールを、器用に避けながらコートの中を動き回るハニ。
助けを乞う様な事もしないで逃げ回るだけでも、スピードに慣れて来たのか、咄嗟にラケットを正面に構えると、ギョンスの打った勢いのあるボールは、顔の前で構えたラケット面に当たったボールは・・・・・
返せなかったボールは、スピードを吸収して止めきれずに顔面で受け止めるように納まった。
ボールを返せなかったハニは、そのままポトンと落ちると同時にハニがコートの中に倒れた。
「先輩・・・・・」
我に返ったギョンスは、気を失っているハニを見てただひたすら謝り続けていた。
「大丈夫か?ぷっ!」
「酷くありません?この顔にくっきりと付いた模様はくっきり過ぎて、学校に来ても顔が挙げられないです。」
「すまん、ラケットを持つと自分が判らなくなるんだ。」
ハニを苛めるつもりでもないが、顔にガットの跡が付いているハニにひたすら謝るギョンスが、何も知らない人たちには面白おかしく見えていた。
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