思わぬ同居人 58
「まぁ・・そうなの・・・可哀想に・・ハニちゃんの綺麗な顔に傷がついて。」
鼻の頭は擦り剥け、おでこに付いた痣が痛々しく見える。
「大丈夫です。鼻の頭に絆創膏を貼って、おでこの痣は前髪で隠せば・・・・」
そう言って笑っても、痛々しく見える。
「鼻が低くてよかったな。オレなら鼻が折れているよ。」
「ギョンス先輩が怒ったのは、スンジョ君が本気出して勝っちゃうからでしょう!普通の人は、先輩が負けないようにするのじゃないの?」
「オレは普通の人間じゃないからな。それに勝負に先輩も後輩も無いから。」
ハニの顔を見てはクスクスと笑うスンジョに、グミはある意味安心をしていた。
人に無関心で、笑った顔も母親の自分でさえあまり見た事が無い。
なんだかんだ言っても、スンジョはハニに特別な感情を持っていることを確信をした。
「スンジョが、先輩にやる気を出させてしまったのね。ハニちゃんを傷物にしたのだから、責任を取らないといけないわよ。」
「何が傷物だよ。美人でもないのだから、適当なお前に見合った相手に出会って、お前が思い描く楽しい大学生活が送れるだろ?」
「まぁまぁ・・・ハニちゃんったら、そんな人がいるの?」
グミに詰め寄られると、手を振り頭をブンブンと振るハニは、スンジョの横で人を見下すような顔で立っていたヘラを思い出した。
「私はスンジョ君に片想いですけど、女版ペク・スンジョって言われている人がいるんです。」
「女版ペク・スンジョ・・・・女?」
「女なんです。美人で頭が良くてスポーツが出来て」
「それは強敵ね・・・・でも、大丈夫よ。ハニちゃんには私が付いているのだから。」
グミのその奇妙な自信が、嬉しくもあり負担も重く感じるが、自分には楽しむことが出来ない母との時間がこうなのかと思えた。
家に帰ればずっと同じ空間にいるのだから、テニスの練習に行って、スンジョと同じスポーツを楽しめると思うと、ハニは自分の授業が無くて暇なときは、出来る限りスンジョの姿を探していた。
大学は高校とは違い、専攻をする学部学科によって、履修をしなくてもいい科目があれば、選択科目を集中して授業を受けないと、補修を当てにする事は出来ない。
高校時代より、授業の途中で父から電話が掛ったりしていたから、もしかしたら店が立て込んで来たという連絡があって授業の途中で帰る事になるかもしれない。
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