思わぬ同居人 59
「3,500ウォンです・・・ありがとうございました。」
最後の客の会計が終わると、レジの中に入っているお金を数えはじめた。
中学生の時から時々ギドンの店を手伝っていたから、レジ締めは素早く簡単に行えた。
忙しい時は勉強をする時間も無い時もあり、それでも嫌な顔をしないで店を手伝ってくれていた娘には、いつも悪い事をしているとギドンは思っていた。
「ハニ、そっちが終わったら賄を食べるよ。」
「はぁ~い、今終ったよ。」
売り上げを袋に入れて、つり銭はつり銭専用の箱に入れて、店の金庫の中に片付けた。
「悪いなぁ・・・大学生になったから勉強も忙しいのに・・・」
「ううん、いいよ。時間が空いている時に来ているだけだから。」
「パートを募集しているから、決まるまでは頼むな。」
母が亡くなってから、父と話をするのは店を閉めた遅い時間のこの時。
「テニスは楽しいか?」
「どうなんだろう・・・みんな子どもの時からやっている人ばかりだからね。」
鼻の頭に貼られている絆創膏に、おでこにはまだラケットが当たった時に出来た痣が薄く残っていた。
「昔からハニは不器用だから、道具を使ったスポーツは苦手だから大変だろう。」
「大変でも、途中で投げ出さないのが私だよ。スンジョ君みたいに何でもできる人を目の当たりにしていると、惨めな気分になる時もあるけど、それでもスンジョ君がコートに立っているのを見ると、頑張ろうって思うの。私の事なんて、なんて思っているのかも判らなくて、意地悪をされているのだから無視されていないと思えばいいけどねぇ・・・・私以外の女の子には意地悪を言わないの。女版ペク・スンジョと言われている子がいるんだけど・・・・スンジョ君よりも意地悪で、まるで自分がスンジョ君の彼女よ~なんて顔でいつもベタベタしているの・・・でもスンジョ君は全然嫌な顔をしなくて・・・・涙が・・ごめんねパパ・・・涙が出て来ちゃった・・・」
ギドンはハニの気持ちは知っていた。
最初は、年ごろになった娘が自分から離れて行く様で少しさみしかったが、いつかは嫁がせなければいけないのだから、ハニの思いが届いてくれればいいと思っていた。
家の中でのハニとスンジョの関わりを見ていると、ハニの一方通行の様で見ていて辛い時もあった。
いつまでもこのままではいけない。
親友との再会に喜んで同居の申し出を受けたけど、同じ年の親戚でも何でもない若い男女が同じ屋根の下で暮らしているのは、世間体にもよくない事だと判っていた。
「パパ・・・・どうしたの?」
「何でもないよ。大学が楽しそうでよかったよ。食べたら帰るから、食器は片付けておいてくれよ。パパは明日の買い出し品の書き出しをしているから。」
「うん。」
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