思わぬ同居人 61
「でね、そのユン・ヘラがとにかく私とスンジョ君の邪魔をするのよ。」
「それはハニの強敵だね。」
「ほんとうだ。金持ちで頭も良くて美人なだけでも、ハニには敵わないのに、意地悪な性格まで似ていたら、ペク・スンジョとお似合いなのかも。」
「そうかな・・・」
「そうだよ。ハニの見た目は何も気にしない子に見えるけど、本当は傷つきやすくて泣き虫で、心が綺麗だから人を疑わないんだよね。」
「その言葉が嬉しいような悲しいような、複雑な言葉だよ。」
そんな他愛も無い話をして、ギドンの店で夕方までハニはミナ達と過ごしていた。
家にいても、今日は居場所が無かった。
理工学部の授業で共同でレポートを纏めるからと、ペク家にヘラが来てふたりが並んで話をしているのを見るのは辛かった。
「ハニ、ごめん!!もう店に帰るね。片付けは新人の役目だから。」
「私も帰るね。課題があと少しで片付きそうだから。」
「いいよ、ありがとう付き合ってくれて。」
「おじさん、ごちそう様。お金、置いて行きますね。」
「いつも悪いね、ハニに付き合ってもらって。」
帰って行く娘の親友たちの姿を見送るギドンは、自分の知らない娘の思っている事に薄々気が付いていた。
決まっている夕食の時間なのに、どこか雰囲気が違う。
ウンジョがヘラの事を称賛するような言葉に、お袋が面白くないから黙っているのもあるが、いつもバカバカしい話をしているハニも、今日は静かに食べている。
「ギドンさん、今日のおかずはお口に合いません?」
「いえ、奥さんの料理はいつもおいしいですが、今日の料理はそれ以上においしいですよ。」
「まぁ・・プロの方に、そう言ってくださるとありがたいですわ。」
そう、おじさんも何か考え事があるから、すごくしんみりとしている 。
「バカハニも、今日お兄ちゃんが連れて来た人みたいに、頭が良くて美人だったらお兄ちゃんも意地悪しないし、僕も意地悪を言わないのだけどな。」
「ウンジョ!そういう事を子供のお前が言うものじゃないよ。ほら早く食べないとみんながデザートを貰えないだろう。」
お袋がいつも言う事を親父が代わりに言っている。
「気に入らないわ。」
「どうかしたのか?ママ。」
「今日スンジョが連れて来た女の子のことよ。」
「連れて来たって、あれは教授が組んだのだから仕方がないだろう。」
「教授がどうのこうのじゃなくて、人を見下したあの態度よ。ハニちゃんは、我が家の一員でもあるのに。」
「おばさん、気にしないでください。私は大丈夫だから。」
そんな空気の中での夕食から二週間で状況が変わった。
0コメント