思わぬ同居人 62
小学校の高学年になると幼いと思っていた弟のウンジョにも好きな女の子がいるのか、気持ちがそわそわとして落ち着かない様子だった。
それをどこで知ったのか、ハニが余計な事をしてウンジョの機嫌を損ねてしまう事になった。
「ゴメンね・・・そんなつもりじゃなかったの。」
「ふんっ!ハニはいつも僕が意地悪を言うから、嫌がるボラを家に連れて来たんだ。」
「違うよ。ウンジョ君は私にとって弟のような子だし・・・ううん、弟よ。この家で一緒に生活をしているのだから。ボラちゃんに、気持ちが通じるといいと思っていたんだよ。」
お袋が宥めても機嫌が直らないウンジョを、普段から対等に喧嘩をしているハニに説得されてもそうは簡単に機嫌は治らないだろう。
「片想いの気持ちって、よく判っているつもりだよ。好きな人に振り向いてもらいたいのは誰だって同じ。嫌われないでいようと思ってもそんな想いは伝わらなくて、邪魔にならない様にしていても鬱陶しいだとか迷惑だとか・・・・どうしたらいいのだろうね。」
「知らないよ・・・」
「人の気持ちなんて、こちらでどうにかできる物じゃないし、ひとりで好きだと思うのもいけないのだろうか?」
「さぁ・・・・」
「辛いね・・・悲しいね・・・片想いって。」
ウンジョを慰めるつもりでいたハニが、自分の思いを話しているうちに、段々と切なくなって涙が出て来た。
そんなハニを、ウンジョは慰める事が出来ず、ただ静かな空間で向かい合っていることしか出来なかった。
ギドンはハニのその話と様子で、ずっと考えていた事に、やっと決心を付ける事が出来た。
「ハニ、空を見ているのか?」
「パパ・・・ここからの夜空って綺麗だと思わない?」
「そうだな。」
この家に来てから久しぶりに親子だけで話すギドンとハニ。
別に話す事が無かったから話さなかっただけで、ぼんやりと考え込むように空を見上げている娘の後姿を見ていたら、数日前にウンジョと話していた時に着いた決心を伝える事にした。
「なぁ、ハニ・・」
「ん?」
「随分と長い間、この家にお世話になった・・・・パパが言いたいことが何なのか、ハニには判るよな?」
「パパ・・・」
ギドンの言うとおり、何を父が言いたいのかハニには良く判っていた。
いつまでも人の世話になるのを気にする父だから、愛妻を亡くした後に再婚をしないで男手一人で娘を育てて来た。
「ハニがスンジョ君の事をどう思っているのか、父親のパパでも判る。ハニの気持ちを知っておばさんが何とかしようとしてくれている気持も判るが、スンジョ君にその気がないし、むしろ嫌がっているのだから、諦めろとは言わないがこの家から出た方が、ハニの気持ちも楽にならないか?辛いだろ?住む家が見つかるまでは店の二階を使えばいい。学校に通うのに便利な所は、いくらでもあるはずだから。」
フリースペースで、ハニとギドンがそんな話をしていることを、自分の部屋で本を読んでいるスンジョには聞こえなかったし、ギドンが娘を思ってそんな考えを持っていた事もスンジョは知らない。
スンジョは人に興味を持ったことも無ければ、人の気持ちを知ろうと言う事も無かったし、人を好きになった事が無かったのだから、相手がどう思っているかは知ることも無かった。
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