思わぬ同居人 63

「そんな・・嘘ですよね?」

 「そうだよ。うちはずっといて貰っても構わないんだよ。」 

「いえ・・・ハニと決めた事ですから。」 

ギドンの隣で俯いているハニは、グミの顔を見たら涙が出そうなくらいに辛かった。

 ペク家に来てから、早くに母親を亡くしたハニにとってグミは母親のように思っていた。

 母が生きていたらこんな風に話をしながら家族の洗濯物を畳んだのだろう。

 母が生きていたら、弟か妹がいてこんな風にふざけたりしたかもしれないと、ウンジョにからかわれてもそれはそれで楽しかった。 


「ギドンさん、考え直していただけません?ハニちゃんはスンジョのお嫁さんにと・・・」

 「奥さんの気持ちは有り難いですが、スンジョ君にはそんな気持ちはないですから。」

 「私がスンジョを説得しますから。時間はかかると思いますけど、私がハニちゃんをスンジョの嫁にと願っているの・・・きっとスンジョも判ってくれますから。」 

2階から1階に下りる階段の一番上の段に座っていたウンジョは、大人たちの話しを直ぐに伝えようと部屋に戻った。 


「おにいちゃん、おにいちゃん!」 

「どうかしたのか?」

 「いい知らせだよ。」

 「いい知らせ?」

 Vサインを出してウンジョはスンジョの顔を見て言った。

 「ハニが出て行くんだって。」 

「出て行く?」 

「やっと出て行くんだよ。今リビングでおじさんがパパとママに話していた。良かったね、面倒ばかりかけるハニがこの家から出て行くことになって。」 


ずっとこの家にいると思っていた。 

やっとハニが騒いでも何をしても、気にならなくなって来たのに。

 理由は何だろう。

 大学でもテニス部でも、そんな素振りを見せていなかったじゃないか。 


ハニが出て行くことを考えていないだけに、突然両親と話し合っていると聞いても、嬉しさよりも意外と寂しさを感じた。


トイレから出ると、ハニが部屋に入ろうとしていた。 

「この家、出て行くんだって?」 

「うん・・・・・淋しい?」

 「まさか!やっと平穏な日が来ると思うと嬉しい。ウンジョも喜んでいたよ。」 

そんな事を言うつもりはなかったし思ってもいなかった。 

本当は楽しませてくれてありがとう、でも口には出せないし出すつもりはないけど、ハニが出て行くとは思わなかったから、告白をしてくれてありがとう。 少し淋しい気持ちもあるが、それもそのうちにきっとお互いに慣れて行くと思う。 


それから数日後にハニはおじさんと家を出て行った。

 行先は≪ソ・パルボクククス≫の空いている客間を使うと話していた。 


気持がハニにないと思っていても、涙目で親父・お袋と挨拶をしている顔を見ると、ほんの少しだけ胸がチクリと痛んだ。 

「スンジョ君、世話になったな・・・たまには店に食べに来てくれよ。」 

「はい。」 

店に来てくれよは、おじさんなりの社交辞令だろう。 

オレも行く予定も行くつもりもないが、一応は返事をした。 

走り去る車を見て、本当にハニはオレの家から出て行ったのだと思った。 

ハニがいなくなった家の中は、在り来たりな言葉だけど灯りの消えた家の様で、家の中が暗く感じた。 

あれ程ハニが来てうるさくてイライラしていたオレが、1年いただけなのにすっかりハニがいる生活に慣れていた事に気が付いた。


 ハニがいなくなっても、直ぐにハニの部屋はウンジョの部屋にならなかった。

 主のいない部屋を見て、その部屋がハニの部屋として馴染んでいた事にも気が付いた。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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