あなたに逢いたくて 85
子供の回復力はとても速く、最初に目を覚ましてからまだ二日目なのに、ベッドに大人しくしていられなくなっていた。
病棟以外の看護師達が、スンジョ君の子供ということで、すごく可愛がってくれる。
事情があって、結婚していたことを秘密にしていた。
そう言う理由でスンジョ君の先輩医師に話してから、天才医師のペク・スンジョの奥さんはどんな人なのか知りたくて私を見に来る人もいたが、スンハに対する態度と違いはっきりと判るくらいに私には無愛想だった。
「なんだ、ペク先生の奥さんは並以下ね。」
「でもサ・・・・子供は、まぎれもなくペク先生の遺伝子を受け継いだ子供だよね。」
そんな会話を聞いては毎回落ち込んで病室に戻っていた。
「スンハのオンマは世界一だよ。アッパはオンマの事大好きだから、元気出して!そういうことを言う人はアッパは嫌いだよ。オンマとアッパは大好きだったから、スンハが産まれたんでしょ?ハルモニが言っていたよ、オンマのお蔭でアッパが笑うようになったって。」
五歳のスンハが、27歳のハニを元気づける。
そんな様子を、巡回から終わって診療所に戻ると直ぐに電話を掛けてくるスンジョに報告するのが日課になっていた。
いつもスンジョからの電話が掛かって来ると、ハニとスンハで取り合いになっていたが、今日は外出許可が出たスンハを連れてグミが買い物に出掛けたため、ハニはギドンの店にいた。
「どっちが親か判んなくなっちゃった・・・・・・なんだか情けなくって・・・・・・」
「いいのじゃないかな、ハニがハニらしくそんな風に話せるようになって。今までのハニは、無理をし過ぎていただろう?父親がいないから自分が・・自分が・・・・って。ハニは努力はしても、自分の心を閉ざして頑張るのは無理なんだ。これからは、オレがハニとスンハを守るから。」
昔のスンジョとは随分と違う穏やかで温かな言葉に、ハニの目からホロリと涙が流れた。
電話で話をしながら、スンジョは机の上の封筒から二通の書類を出した。
「ハニ・・・・届いたよ。オレ達の婚姻証明とスンハの認知証明が・・・・・・これで、オレ達は本当の家族だ。ギミさんも喜んでくれた。」
「・・・・・・・・・・」
「ハニ?」
「・・・・・・ありがとう・・・・・・・本当に私がスンジョ君の奥さんでいてもいいの?」
いつでもハニはスンジョが自分を必要としていることに、何度スンジョが言っても中々信じられないのか不安がる。
「当たり前だろう。オレがオレらしく笑ったり怒ったり泣いたりできるのはハニが隣にいるからだ。オレらしくいるには、ハニじゃなければダメなんだ。もっと自信をもてよ、ペク・スンジョがオ・ハニを選んだって。」
「うん・・・・・・夢みたい・・・・・・」
「スンハと島に戻って来る時に、ギドンさんとオレの両親と一緒に来てほしいって、ギミさんが言っていた。島の皆に披露するらしい。」
人前で賑やかなことをするのが好きではないスンジョが、ギミが島の皆に拾をすると言った事を承知した事にハニは驚いた。
「スンハが、おばさんともうすぐ帰ってくるから報告するね。本当にスンジョ君の子供になれたことを・・・・・・パパにも言わないと・・・・・」
ハニの喜びが電話からも伝わってくるようで、スンジョも嬉しかった。
「明日は、スンハから電話を掛けさせるね・・・・スンジョ君・・・大好きだから、ずっとずっとそばにいるね。本当に大好きだよ。」
「ああ・・・・判ってる・・・・・・・ハニ・・・あのさ・・・・・」
「えっ?」
「・・・・・愛してる・・・・・・」
スンジョは初めて口にした言葉を言って、ハニの応えを聞かずに直ぐに電話を切った。
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