思わぬ同居人 69

 自分の住むマンション前の縁石に座るスンジョは、苦しそうに眉間にしわを寄せていた。 

「隣に座ってもいい?」

 「どうぞ、ご自由に・・・・」

 いつもなら『くっ付くな』と言って、ハニが座ると同時にスンジョは立ち上がるが、今日はまるでハニが座るのを待っていたように見えた。 

コイツに言っても何の役にも立たないかもしれないが、なぜかコイツに自分の気持ちを話してみたい気持ちになった。


 ――――― 嬉しい事は人に話して倍に、悲しい事は人に話して半分に 


このハニが教えてくれたおばあさんから教えてもらった言葉は、自分の心の深い所に記憶されていた。


「誰にも言うなよ。お前だけに話すのだからな。」

 「うん、言わないよ。」

 「オレ・・・・医学部に行こうと思う。出来るかどうかわからないけど、初めて自分でやってみたいと思う事を見つけたんだ。」 

口に出して言ってみると、胸につかえていたものが取れた様に軽くなった。 

驚いた顔をして動くことが出来ないハニは、一瞬目をパチパチとしていたが、直ぐにスンジョが言った事が理解できると、自分のことのように嬉しそうな顔をした。 


「お医者様になるってこと・・・・だよね。」 

「なれるかどうかは判らないけれどね・・・・・」

 「出来るよ、出来るよ、スンジョ君なら!!!」

 「簡単にお前は言うんだな。」

 スンジョの手を握って、ブンブンと振り回してくれるハニの顔につられる様に、スンジョの顔に笑みが表れた。

 「一番最初にお前に言ったからな、お袋にも親父にも誰にも言っていないから、絶対に医学部に行く事を話すんじゃないぞ。」 


念には念を押して約束をしても、ハニはうっかりと口を滑らせてしまうことがあるが、そんな心配は無用のように身体の力が一気に重みが薄れたような気がした。


そのままオレは、ハニに送って行かないからと言ってマンション前で別れた。


お前だけに話すと言ったのが余程嬉しかったのか、ハニはスンジョが医学部に行くと話したことは誰にも言うことはなかったが、スンジョが医学部への転部手続きをして校舎を見学に行っている時に、気になって見に来ていた事は、さすがにスンジョにも予想が付いた。 


医学部に移って3ヶ月が過ぎて勉強や環境に慣れた頃に、まさか思いもよらない事が起きるとは予想もしなかった。


  「お兄ちゃんが来たよ。」 

久しぶりに家の中に入ると、健康診断の結果が良くなかったのか、スチャンとギドンは検査結果を見ながらため息を吐いていた。

 「ママ、ワシはメタボだから食事に気を付けるようにと言われたよ。」

 「まぁ・・・ごめんなさいねパパ。子供たちの成長ばかりを考えて、パパの身体のことまで考えていなかったわ。ギドンさんはどうでした?」 

「私は、予備軍だそうで・・・料理人が自分の健康管理も出来んでは・・・」 

「気を付けてくださいよ、ギドンさん。ハニちゃんがお嫁に行くまでは、元気でいて貰わないと。」 

「そうだよ。ハナさんが見られなかった、ハニちゃんの花嫁姿はお前が見ないとな。」 

スンジョがスチャンとギドンに挨拶をして、ソファーに座るのを確認すると、何かを思いついたような顔をした。 

「でも、早いうちにしてもいいかもしれませんわ。ハニちゃんは家のスンジョの嫁になるのだから。」 

「勝手な事を言うなよ。オレの考えを聞かないで。」

 内心嫌ではなかった自分に多少戸惑ったが、親父の健康診断の結果が気になった。


「見せて・・・」 

スチャンから検査結果の紙を受け取ると、項目を一つずつ確認をした。

 「親父の場合、仕事のしすぎですよ。休みの時も、接待ゴルフだとか付き合いも多いから・・・・この数値が身体的なストレスを受けると変わる数値で・・・・」

 無口なスンジョが、スラスラと話しているのをグミとスチャンは不思議な顔をした。

 「スンジョは、よく本を読んでいるから知識はある事は判っていたが、まるで医者の問診をして貰っているみたいだ。」

 気が付いていないと判っていても、親に話さないで決めた事に多少後ろめたさはあった。  


ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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