思わぬ同居人 74
室長には父が倒れても開発中のゲームはそのまま続け、状況等は明日自分の口から各課の責任者に伝えると約束をして、そのままスンジョはスチャンの見舞いに向かった。
個室の札はまだ面会謝絶。
落ち付いているものの、まだ状況は決して良くない。
担当医にスチャンの長男だと伝えると、出来れば手術を考えたくはないが、状況次第では緊急オペになる事を聞いた。
「お袋・・・・・」
初めての看病で疲れたのだろう。
グミは、スチャンのベッドにうつ伏せていた。
「お袋・・・・・」
「ああ・・・スンジョ・・・まだ学校じゃないの?」
「休んだ・・休んで親父の会社に行って来たよ。」
「そう・・・室長に話して来たの?」
「開発中のゲームは、今まで通り進めて行って欲しいと・・・あと、オレ・・明日から会社に行くよ。」
「スンジョ・・・・それじゃあ・・・・」
「親父が大きくした会社を守る為に。」
グミはスンジョの言葉に安心をした。
大学を休学する事になり可哀相な事をしたとは思っていたが、長男であるスンジョが会社を継いで欲しい気持ちは変わらない。
このままいい状況なら半年の入院だが、悪化すれば手術をしなければいけない。
自分のまだ見つけたばかりの夢を諦めて、両親が望んだ道を決めれば喜ぶだろうし、その方がスチャンの心臓にストレスは掛らない。
夢は夢で終わらせて、家族が喜ぶことを選んだ方がいいのだろう。
初めて見つけた医師となって医療現場で働くと言う夢
ウンジョの入院で間近に見た緊張感とやりがいのある仕事
その夢を、同じ医療現場で諦める
「スンジョ君・・・・」
遅い時間に帰宅したスンジョが、ダイニングテーブルで考え込んでいるのを見つけたハニは、スンジョの悲しみが伝わる空気に胸にグッと来た。
「おじさん、よくないの?」
「場合によったら手術になるかもしれない。オレ、大学を休学するよ。」
「スンジョ君・・・・・」
「このまま大学を辞めるかもしれない。」
「でも、医学部は・・・医学部はどうするの?医者になるのは初めて見たスンジョ君の夢でしょ?」
「いいさ、見つけた夢はまだ始まったばかりの夢。親父が夢見た道は、ずっとオレが産まれた時から見た夢で、その為に親父は身体を壊したのだから・・・・・オレが夢を諦めて、両親が喜べばそれでいいさ・・・」
ハニは自分で何もしてあげられない事が悲しくて、ただ黙ってスンジョを抱きしめる事しか思いつかなかった。
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