思わぬ同居人 82
日曜日だから朝は起きなくてもいいと前日眠る前に話していたのに、ハニはいつも通りに起きて朝食の用意をしていた。
「おはよう!あれ?まだ普段着でいいの?」
「昼過ぎに出て行くと言っただろう。それまで家で寛いでいたっていいだろ。」
「そうでした・・・・・でも食べてくれるよね?張り切って作ったから。」
断る理由などなかったし、見合いだと言わなかった事を誤魔化すのもあった。
なかなか上達をしないハニの料理も、気持ちだけは必死なことが伝わる 。
「私も一緒に食べてもいい?」
「お好きなように・・・・」
会食が実は見合いだと知ったら、ハニはどう思うだろう。
オレの小さな心の変化まではハニは気が付かないだろうが、まるで結婚を約束した恋人のように家のことをハニなりに頑張っていた。
朝食を食べ終わる頃に、淹れたてのコーヒーを持って来るのなんて、あまりにも健気で一生懸命だから、ついたのみごとをしたくなってしまう。
ユン会長の指定した日本料理店に入ると、女将がユン会長のいつも使っていると言う部屋に案内をしてくれた。
「お連れ様がいらっしゃいました。」
「通してくれ。」
女将は両手を添えて静かにドアを開いた。
「やぁ・・・・」
先日会社で会ったユン会長とは違って、プライベートらしい表情でスンジョを招いた。
「上がってくれ。」
靴を脱いで畳が敷かれた室内に上がると、ひとりの女性が座っていた。
「アンニョン!」
片手を上げて挨拶をするその女性は、同じ理工学部のユン・ヘラだった。
「スンジョ君、驚いただろう。ワシも今日ヘラから話を聞くまで知らなかったよ。聞くところによると同じ学校だとか・・・」
「はい、同じ理工学部でテニス部なんです。」
「そうか・・・自己紹介は省いてもいいな・・・それなら、何か食べる物を・・・・」
「彼は、脂っこい物とかは苦手で、野菜が好きなのよね?」
「ほっほぅ・・・結婚したらいい女房になるな。」
大きな声で笑うユン会長に、スンジョは苦笑いをして合わせていた。
若い者同士の話に邪魔をするほど野暮じゃないからと言って、ユン会長は二人の料理を頼んですぐに会食の席を外して外に出て行った。
食事が終わると、堅苦しい日本料理店からどこか公園に場所を移して話をしようと、店の外に出ると少し歩いた所に静かな公園があった。
日曜日の公園は、家族連れが遊んでいたり、大学のサークルの集まりで何かの練習をしている人や、恋人たちがベンチに座っていた。
「私で驚いていたみたいね。あなたの驚いた顔を初めて見たわ。」
「驚いたよ。でも、お見合い相手が君で良かった。」
「本当?私は、ちょっと嫌だったわ。大学やテニス部で自然に親しくなって付き合いを深めたかったわ。おじい様からいつもお見合いの話を貰って断っていたくらいだもの。それに、会社の為のお見合いでしょ?嫌じゃない?お金絡みのお見合いだなんて・・・・」
「別に・・・・」
別にじゃない。 本当は、すごく辛くて悩んだ。
また人からよく見られようと、オレはいい格好をしている。
0コメント