思わぬ同居人 87
親父の代わりに会社に行き始めてから半月はあっという間だった。
土・日も警備員に無理を言って会社を開けてもらい、やりかけたファイルのデータ化を進めていた。
もうあとは、過去のデータを社員に任せて、オレがやって行くのは今年に入ってからの資料だけになった。
昼近くまで寝たのは随分と久しぶりだ。
シャワーを浴びて、昼過ぎにヘラに会う為に出るにはまだ早いが、新聞を読みながらブランチを取ろうと思いリビングに降りた。
ダイニングテーブルで一人ウンジョがトーストを食べていた。
キッチンにもリビングにもハニはいなかった。
洗濯もすでに干されていたし、この時間ならいつもダイニングテーブルで、ウンジョと話をしながら菓子を食べていた。
「ハニは?」
「おじさんのお店の手伝い・・・」
「そうか・・・」
「ねぇ、お兄ちゃん今日は会社に行かないの?」
「仕事が一段落したからね、今日はゆっくり休んで、親父の見舞いにでも行こうかと思っている。」
「僕も行ってもいい?いつも行きたくても、ひとりでは遠くて行けないから。」
「いいよ。」
オレは運転が出来るから、その気になればいつでも行けたが、ウンジョはまだ一人でバスに乗ってどこかに行った事が無いから行きたくても行けない。
口でいくら元気になったと言っても、自分の目で見ないと判らないだろう。
オレがウンジョでもそう思う。
トーストとハムエッグを食べて、コーヒーを飲んでいるとヘラから電話が掛って来た。
<スンジョ?今日、会わない?>
「ごめん、ウンジョと親父の見舞いに行く約束があるから。」
<それなら私も・・・・>
それは困る・・・・ お袋は君を嫌っているし、親父にまだ君を紹介できないから。
正式に婚約をしたわけでもないから、適当な理由で断ってもヘラは判らない。
「家族以外の面会はまだ出来ないんだ・・・」
<そうね、婚約者と言ってもまだ正式に婚約をしたわけではないから仕方がないわね。面会が出来るようになったら、お父様に正式に私しを紹介をしてね>
「あぁ・・・・」
お兄ちゃん、早く行こうよとウンジョが玄関で靴を履いて待っていた。
さりげなく見るシューズボックスの中のハニの靴の段に、お気に入りだと言っていた靴が置いてあることにホッとした。
ウンジョを疑うわけでもなく、ハニが誰かとデートをしたとかじゃなくて、本当にギドンの店の手伝いに行ったのだと思うと不思議と安心した。
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