思わぬ同居人 94
ヘラの車が見えなくなるまで外にいたスンジョは、ムッとした顔に変わったかと思うと、急ぎ足で家の中に入って行った。
家の中ではグミとハニが、スチャンの退院祝いの片付けをしていた。
「お袋、話がしたい事があるから・・・・」
「いいわよ。私もスンジョに話がしたい事があるから。」
グミがスンジョのことを名前で言うときは、怒っている時だ。 「おばさん、私が片付けますから、スンジョ君と話して来て下さい。」
「いいのよ、スンジョを待たせれば。」
「でも・・・・」
「おばさんは、絶対にあの女の子を認めないわ。スンジョにはハニちゃんがお似合いなんだから。好きな女の子と結婚をすればいいのに、あんなつまらない子と見合いをしたスンジョの気持ちが判らないわ。本当に親の顔が見たいって・・・・あ~どうしてあんな息子に育ったのか。」
思う様にいかないハニの想いを心配するよりも、間違った選択をしている息子を正しい道に戻したいと思っているグミ。
人の気持ちが思う様にならないことは判っていても、間違っているスンジョの考えを正さないと後悔することになる。
いがみ合うようでもなく、二人はお互いに譲らない思いで話し合うために向かい合って座った。
そんな二人の間にハニは入りにくそうに、グミとスンジョの前に静かにお茶を置いた。
「親父の退院祝いに来てくれた人に、あんな幼稚な対応しかできないのか?」
「幼稚な対応?そんな事を言えないでしょう。ハニちゃんの気持ちを知っているのに、この家にあの子を連れて来るなんて。」
「ハニの気持ち?ハニの気持ちなんて関係ないだろう。ヘラも気分が悪かったと思うじゃないか。」
「気分悪く思ってもいいじゃないの。私は絶対にあの子を認めないし、この家に一歩も入れないわ。あなたにはあの子よりもハニちゃんが似合うのよ。」
「ハニ、ハニ、ハニって・・・オレは恋愛も自由になれないのか?」
「自由な恋愛って、あの子とはお金だけの関係じゃないの。パパが言った事を判ってくれないの?会社の事は気にしなくてもいいから、スンジョは好きな女の子と結婚をしなさいよ。判っているでしょ?自分が誰の事を好きなのか。断って・・・・ハニちゃんと・・・」
―――――バンッ
「ふざけた事を言うなよ。オレが幼い時にした事を忘れたのか?嫌がりはしなかったが、女の子の格好をさせて。同じことを繰り返すのか?」
「同じ事じゃないでしょう。今回はスンジョの考えが間違っているからよ。」
「今まで自由にさせて来たのだから自由にさせてくれよ、オレはお袋の人形じゃないのだから、これからも自由にさせてくれよ。」
「自由にさせた結果が、ハニちゃんを傷つけてもいいと言う事なの?」
「おばさん・・・私は・・・・」
「ハニは関係ないだろう。親だからって子供の自由を奪ってもいいのか!」
今まで見たことも無いスンジョの怒りに、二人の声はだんだんと大きくなり、部屋で休んでいたスチャンが出て来たと思ったら、スンジョの所まで来て息子の頬を叩いた。
「いい加減にしないか!親にその言い方は何だ!」
その場から離れたいほどの険悪な空気の中、ハニが心配そうにオレたちの方を見ている事に気が付いた。
0コメント