思わぬ同居人 97
ミナとジュリの話を聞いてから、胸にモヤモヤとしたものが何だったのかと、漠然と解るようになって来た。
今日はおじさんが家に来るから、夕方には帰って来いと親父が言っていたが、まさかハニがジュングと結婚をすることになったと、話しに来るのではないだろうかと思った。
さっき家に帰った時には、おじさんが来ている様子も無かった。
いつジュングにプロポーズをされたのだろうかと、ベッドに寝転んで考えた時に思い出した日があった。
あれはまだ親父が退院する前の週の日曜日だった。
オレが起きるよりも先に起きて、いつもウンジョと話をしているはずのハニの姿が、リビングにもダイニングにも見えなく、ウンジョがひとりでトーストを食べていた。
「ハニは?」
「出かけたよ。」
「出かけた?」
「うん、何だか知らないけど、随分とお洒落してね・・・・赤いコートに赤いスカートに・・・全身真っ赤だった。」
「ふ~ん・・」
気にしない振りをして、新聞を読んでも気持ちが集中できない。
ミナやジュリと遊びに行くのにお洒落をしたのか?
まさか、誰かとデート・・・・
「髪の毛もクルクル巻いて、お化粧までしてさ・・・・デートだとか言っていたけど、ハニとデートをするなんて随分と物好きがいたものだよね。」
「そうだな・・・・」
誰とデートかと考えても、ハニは特別に男と付き合っていたとは聞いた事は無かった。
ヘラと会う約束をしていたし、帰宅する予定が遅くなる事もあったから、ウンジョ一人でオレが帰るまで置いておけないし、親父が入院をしている病院に連れて行けば、お袋が一緒に帰って来てくれるはずだ。
オレが待ち合わせ場所に行くと、ヘラがミュージカルを観たいからチケットを買ったけど、開演まで時間があるからと、近くの公園で時間を過ごす事になった。
ジャグリングを見ていると、遠く離れたところでバドミントンをしているカップルに目が行った。
大学のテニス部に入ったばかりの頃に、家で必死になって素振りをしていたのを思い出した。
全く初心者のハニは、ラケットを握る事も出来ず球拾いが専門だった。
ヘラとミュージカルを観ている時に、高校生の時にお袋の陰謀で行く羽目になった軽い内容の演目でハニの楽しそうな顔を思い出している時、前の方の座席の人が居眠りをしている人がいた。
この作品だったらハニはきっと居眠りをしていただろうと思うと、舞台での場面とは無関係に自然と笑っていた。
不思議そうにヘラが見ていたが、まさかオレが舞台を観ていないでハニを思い出していたなんて思いもよらないだろう。
この時にはオレの中に占めているハニの割合が、予想以上にオレの心を占めている事に気が付いた。
気が付いたけど、それを認めたくない意地っ張りな自分にイライラもしていた。
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