思わぬ同居人 99
モヤモヤとした物が胸の奥で湧き上がって来た。
何だ?このスッキリしない物は。
頭の中からハニの事を追い出そうとすればするほど、それに反するように大きくなってくる。
それが何なのかは判らないが、ハニがジュングにプロポーズをされたと聞いた辺りから感じていた。
『今日、ジュングに返事をする』
オレがヘラと婚約をしたから、お前はオレを忘れてジュングのプロポーズを受けるのか?
お前はオレが好きなはずだ。
オレ以外を好きになれるのか?
それならオレはどうするつもりだ?
自分は結婚をするのに、ハニがオレから離れないとでも言うのか?
それはオレの身勝手な思い込みだ。
オレは思いもよらず自分をこんな気分にさせる同居人のハニに何を思っている?
このプライドを捨てて、ハニにひざまずいてジュングと結婚をするなと言うのか?
「オレはもしかしたら・・・・・」
スンジョはベッドから勢いよく起き上り、コートを着ると急いで階段を降りた。
「出掛ける。」
「出掛けるって・・・・遅い時間じゃないの。ユン会長の・・・・・」
グミの言葉が聞こえないのか、傘を一本手にして玄関を出て行った。
「どうしたのかしら・・・あの子と今日は約束していないと言っていたのに、こんな時間にそれも雨が降っているのに呼び出すなんて・・・本当に嫌な子だわ。ハニちゃんを選べば、こんな時間の雨が降る時に呼び出したりしないのに。」
昼間は晴れていい天気だったのに、夕方から降り出した雨は知らない間に本格的な降りになっていた。
ハニがジュングにどうプロポーズの返事をしたのか、そればかり気になって仕方がなかった。
通り過ぎるバスを待つ間、ハニがこのまま帰って来なかったらどうするのかと考えていた。
最終バスにハニが乗っていなかったら、ジュングと会っている場所に乗り込むのか?
やっと自分の気持ちに気が付いたのに。
気が付いた途端オレとは違う男の物になるのか?
プシューと言って、バスの自動扉が開くと、ハニが降りて来た。
雨が降っているのに傘も持たずに出かけていたのか、頭から足もとまで全身ずぶ濡れだった。
「よぅ・・」
「迎えに来てくれたの?」
何を話していいのか、何を聞いていいのか、何を答えていいのか。
今のオレには判らない。
ハニが好きだと言ったらいいのか、それともジュングのプロポーズを受けたのかと聞いたらいいのか。
「誰と会って来たんだ?」
「えっ?」
「ジュングか?」
「会っちゃいけないの?」
いけない訳じゃない。
そう言う事も出来ない程、オレはお前を好きだと気が付いた事に緊張をしている。
「プロポーズの返事をしたのか?」
ハニがどう答えるのか気になるが、聞かないではいられなかった。
受けると言ったら、オレは断れと言うつもりなのだろうか。
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