思わぬ同居人 101
行き成りのプロポーズに驚いた親たちに、結婚する事を反対をするとは思わなかった。
おじさんはハニが好きになった男だからと言って、娘をよろしく頼むと嬉しそうな顔をして言ってくれた。
お袋は念願が叶って娘が出来ると言って、子供のように喜んでいた。
あんなにオレを心配していた親父は、黙って笑顔で頷いていてくれた。
みんな間違った選択をしたオレが、自分の気持ちに気が付くように、何も言わないで待っていてくれた。
オレの隣に立っているハニは、驚くよりもビックリして夢でも見ているのではないかと思っているみたいだ。
今日一日で、オレとハニの間が随分と変わったのだから、そう思うのかもしれない。
今日一日だけで随分と変わったわけでは無くて、この数ヶ月・・・もう少し前、もっと前の高校三年の時に同居してから、こんな風になる為に平穏な生活が変わって来たのは、この日の為だったのかもしれない。
思いもよらない他人との同居の話を聞いて、その翌日に来たのはオレに告白をしたた女の子が親父の親友の娘で、同居になって戸惑ったのはオレだけじゃなくてお前も同じだろう。
学校で告白の手紙を添削されて返され、それも大勢に人の前で読まれる羽目になって呆気なく振られた。
振られた相手との同居は、いい気分がしなかったはずだ。
それなのに、オレは自分が被害者の様に、散々お前に意地悪を言ったり泣かせたりし、お袋がお前とオレを結婚させたがっていた事に反発をしていたのに、最初から決まっていたのかそれとも運命だったのか、結局はお前と一緒になる道を選んだ。
運命の相手というのがこの事なのだ。
どう自分が反発をしても、決められた運命には逆らえないと言う事。
自分の毎日の静かな生活の流れを壊したのではなく、本当にオレにとっていいという生活になるための流れだったのだ。
愛しているよ。
バルコニーから夜空を見上げて、嬉しそうに笑っているお前のその後ろ姿に、心の中で言うことしか出来ないけど、世界でただ一人だけオレの本当の気持ちになれる相手のお前を愛している。
そう思うのもそう言うのもお前ただ一人。
スンジョは、バルコニーで一人たたずむハニの近くまで歩いて行った。
「まだ寝ないのか?」
「眠れないの・・・・」
「雨が上がったな・・・」
夜空に煌めく星の瞬き。
ハニの少し眠そうな目の輝きの様に、その煌めきは微笑んでくれている。
「人を好きになるって、沢山の人に迷惑を掛ける事になるのね・・・ジュングに、ヘラ・・・・ユン会長と、おじさんの会社の社員・・・・大丈夫なのかな・・・私と結婚することになって。」
「大丈夫だよ。ジュングやヘラだって判ってくれるし、ユン会長にはどんなに時間が掛っても謝り続けるから。」
「スンジョ君が謝るの?」
「謝るよ。自分の間違いは自分で解決をする。オレの奢り高ぶりが招いた事だ。親父もユン会長が資金援助を辞めると言ったらその時はその時で、この家を抵当に入れてもいいと言ってくれたし、ユン会長が公私混同して、援助を辞める人ではないと言っていた。ハンダイへの援助を辞めて、ハンダイが他の所で多額融資をしてもらってゲーム売り上げが上がったりしたら、困るのはユン会長だ・・・・・」
オレの考えと親父の考えは、似ているのかもしれない。
親父はお袋が傍にいるから、仕事に力を入れられたように、ハニが傍にいてくれるのならオレはどんな事にでも頭を下げる事が出来る。
「もう寝るぞ・・・・」
「あっ・・・・」
スンジョのパジャマの裾を引っ張ったハニは、少し恥ずかしそうにしていた。
「朝起きたら、意地悪なスンジョ君になっていたら・・・」
「一緒に寝るか?」
「ううん・・・・そうじゃない・・・」
オレは自分の気持ちに素直になれたから、お前と一緒のベッドで朝まで眠っても構わないが、オレ達の事を耳を澄ませて観察している人に残念がらせたい。
大丈夫、あと少しだから。
ハニが大学を出て、親父の会社が落ち着いたら、その時はちゃんと結婚式を挙げるから。
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