思わぬ同居人 103
「ハニと結婚をする事にした。」
「そう・・・」
ヘラは<どうして?>とか<うそ!>とか言わなくて、<そう・・・・>とだけ言った。
「君を騙していた訳じゃない。」
「知っていたわ。」
「知っていた?」
「多分、あなたのお母様と同じで、ずっと前からあなたがハニの事を好きだと気が付いていた。」
意外だった。
オレ自身がハニを好きだと思ったのはつい最近で、それまでは関わりたくないと思っていた相手だ。
「意外と早くあなたがハニの事を好きだと気が付いて、ちょっと残念だけど・・・・人に気持ちが向いている人と結婚する気はないわ・・・・・とにかくおめでとう。」
彼女らしく去って行く人を引き留めない潔さに、多少気が引けるところもあったが、どう話したらいいのだろうかと思っていたから安心した。
ユン会長にはヘラが話しをしてくれると言っていたが、そのままにはしておけない自分の口から伝えなければ。
そう思ってはいたが、会社で仕事を片付けようと思っていた時にユン会長からの電話が掛って来た。
「会長・・・・」
最初から、怒鳴って来るのではないが怒っているような声だった。
<他に好きな女性(ひと)がいるから結婚が出来ないって?>
「はい、申し訳ありません。」
<最初に、好きな女性がいるのかチャン室長に聞いて貰った時に、いないと言っていなかったか?>
その時はいませんでしたと言っても、そんな事でユン会長が判ってくれるわけでもない。
ただひたすら謝るしかなかった。
自分の考えをまとめて電話を掛けても繋がらず、会社の方に行って直接謝るしかなかった。
人に頭を下げたり謝ったりすることが、出来なかったオレが出来るようになったのはハニのお蔭だ。
0コメント