あなたに逢いたくて 93
「アッパァ~、お帰りぃ~」
「ただいま。」
クルクルとしている大きな目を背の高いスンジョを見上げていると、スンジョは目じりを下げてスンハを抱き上げた。
「アッパ、私は小さな女の子じゃないのよ。赤ちゃんみたいに抱っこしないで。」
「スンハはアッパの大切な女の子だから、抱っこしたいんだよ。」
嬉しそうに笑ってスンジョの首に細い腕を巻き付けて、スンハが頬にキスをして来るとスンジョも嬉しそうな顔をする。
「オンマとスンハとどっちが大切?」
拗ねたようにスンジョに聞くスンハは、ハニがよくそんな風な顔をするが、それととてもよく似ている。
「スンハもオンマも大切で、アッパの傍にいないと寂しいよ。アッパがオンマを大切に想うのは、可愛いスンハがオンマを大切に想うからだよ。」
「私の弟は?」
「勿論、スンハの弟も大切だよ。」
診察室に買って来た物を、机の上に置くとその袋の中からまた別の紙袋を出した。
スンハを床に静かに降ろして、その紙袋を渡した。
「約束していた本だよ。スンハが読むにはまだ早いけど、大人になったらきっとスンハは素敵な女医さんになるね。」
スンハはそれが何なのかすぐに判った。
ハニの妊娠が判って直ぐに、「どうして赤ちゃんが出来るの?」「オンマのお腹の中で赤ちゃんは何をしているの?」「赤ちゃんは・・・・・どうして?」
と気になって仕方がなくてスンジョによく聞いていた。
「赤ちゃんの事が判る本が欲しい。」
まだ6歳のスンハに子供向けの本はすぐに飽きてしまう。
かと言って本格的な医学書ではまだ早すぎるし、6歳には6歳の子供が読む本がある。
中・高校生向きの写真付きの教材を見つけて買って来たのだった。
紙袋を受け取ると直ぐに本を中から出すと、嬉しそうにページを捲っていた。
その顔を見ながら、ハニがいつもしているように、買って来た物をそれぞれの場所に片付けた。
「スンハ、オンマに赤ちゃんの名前を伝えに行くけど一緒に行く?」
「うん!!」
スンジョに手を引かれてスンハはスキップをしながら、ハニが休んでいる離れの方に向かった。
「ハニ・・・・あっ・・・」
「ス・・・スンジョ君・・・」
スンジョとハニは、ドアを開けた瞬間にお互いにこんな時にどうしたらいいのかと思うくらいに、真っ赤な顔をして動く事が出来なかった。
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