思わぬ同居人 105
「ユン会長をお願いします。」
「お約束はされて見えますか?会長のスケジュールには来客の予定はございませんが・・・・・」
「いえ・・・会長に連絡を入れたのですが、取り次いでいただけなくて。」
「お名前は・・・」
「ペク・スンジョです・・・ハンダイの社長代理のペク・スンジョと申します。」
「畏まりました、会長に確認を取りますのでお待ちくださいませ。」
オリエントコーポレーションの本社社屋に訪問をした事は無かった。
受付でユン会長に取り次いでもらったが、約束がないと取り告げないと断られることは判っていたが、電話を掛けてもユン会長は出てくれない。
何度も電話を掛けたが、最初は出てすぐに切られたが、そのうちに着信拒否の設定に切り替わっているのか、ワンコールの呼び出しも無く切れてしまった。
約束を入れようにも入れる前に、着信を拒否されていたらどうしようもない。
「申し訳ありませんが、会長はハンダイの会社の人にはお会いしたくないと・・・・」
「会いたくない?」
「そう申しておりましたので、お引き取りいただけませんか?」
引き下がらずこの場に残っていても、親父の会社の名前を出したのだから、一旦ここから帰るしかない。
想像はしていたが、政略結婚がうまく行かなくなった場合、それなりのリスクはある。
「また、明日来ます。」
困った顔をしている受付の人は、オレがなぜか会長を怒らせたのかは当然知らないだろう。
会長と会う事が出来ないまま、会社に行くと親父が開発室のスタッフからゲームの発売までのスケジュールの説明を受けていた。
「遅くなりました。」
「おお、スンジョ・・用事は済んだのか?」
「ええ・・ちょっといいですか?」
やはり社員の前で話す事ではないし、聞かせたくない。
親父もその事に察したのか、説明を聞くのを途中で止めて社長室に入るように顎を指した。
「会長は会ってくれなかったのか?」
「はい・・・」
「そうだと思っていたよ。座って話そうか?」
自分の浅はかな考えで、いくつものとんでもない間違いをした。
こんな風にオレがミスをすることが今まであったのであろうか。
「あまり考えすぎない方がいい。パパが明日会長と会って話してくるから、スンジョはやりかけの仕事に専念しなさい。」
「でも・・・・」
「人生経験が豊富な人は、若い人が話しても勝てないよ。スンジョが思うほど、会長は懐が狭くない。パパに任せておきなさい。」
任せておきなさいと言われても、そのまま任せる事は出来ない。
小さな子供ではないのだから、自分でした事は自分でちゃんと話を付けたい。
そうしなければ、これから先のハニとの人生に、親の助けを必要としないといけなくなるから。
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