思わぬ同居人 107
「ユン会長に取り次ぎを・・・・」
「あの・・」
受付の女性は、連日来社しても会長が会おうともしない青年が、また今日も断られてしまうのが可哀想に思っていた。
「試作品が出来たのでお持ちしたことを伝えてください。」
「あの・・・・ハンダイの社長代理でいらっしゃいましたよね?」
「はい?」
「ユン会長は、ハンダイのペク社長と会談中ですが・・・・」
親父が?
「どこの部屋ですか?」
スンジョはスチャンとユン会長が会談をしている部屋を聞くと、急いでそこに向かうエレベータに乗り込んだ。
親父が来ている。
確かに今朝家で得意先に用があってと言っていたが、まさかユン会長と会うのだとは気が付かなかった。
自分で起こした問題を自分で解決をすると言っていたが、結局親の力を使ってでしか解決が出来ないのか。
今はまだ親父に尻拭いをしてもらわないといけない頼りのない息子でも、自分の能力も自覚しないで強がっているだけなのかもしれない。
会長室の前に立つと、深呼吸をしてドアを開けた。
パソコン操作をしていた秘書が立ち上がると、スンジョに会長は来客中だと伝えるが、スンジョは今会長と会談しているハンダイの社長の息子だと告げて、半ば強引に奥に通してもらった。
「失礼します。」
「君は・・・・」
「スンジョ・・・・」
スンジョは部屋の中に入ると、そのまま父と会長の座っている所まで歩いて行った。
「試作品が出来ましたので、お持ちしました。」
「試作品?融資を中止すると、今君のお父さんに話したのだ。」
「か・・・会長・・・それは・・・」
会長の言葉に驚いたスチャンは、椅子から立ち上がりかけたが、ユン会長に座るようにと合図をされた。
「自慢の孫娘を傷つけて泣かせて、付き合っている女性はいないと言っていたから、会食をしたのだろ?実は好きな人がいました、その人と結婚がしたいからヘラとの縁談は無かった事に?身勝手過ぎないか?融資はして欲しい、その条件の一つにヘラとの見合いと結婚。」
「身勝手なのは、判っています。プライベートと仕事とを区別をするものだと、会長は判っているはずだと思っていました。このゲームを作るのに携わったのは会長だけではありません、うちの社員たちの生活を守る為に融資の条件の会食だったにしても、完成したゲームを見てから融資の中止か継続かを決めてください。」
ハラハラして会長に掴みかからんばかりに話すスンジョを、スチャンは止めようとしていた。
「そうまくしたてるように言わんでもいいだろう。毎日毎日、電話を掛けて来たり、会社に押しかけたり・・・しつこくて迷惑をしていた。」
「申し訳ありません・・・・」
「ま・・・ワシはヘラが可愛くてな・・・・平気な顔をしていたが、自分から破談にしたと言っていたが、そうじゃないことは判っている。ヘラを傷つけたのだから、少し君を苛めて見ようと思ってな・・・・」
「会長・・・・」
「融資の中止は、前回君とした融資を中止して、新たに別の条件にしてさっき契約をしたよ。」
「えっ?」
スチャンが契約書をスンジョに見せると、融資額が増額されていた。
「大人気ないし、可愛い孫娘を金のために利用した報いだと思ってたよ。増額した理由は、このゲームは必ず売れるはずだから、その分を計算して上乗せした。」
スンジョの知らない所で、スチャンが会長と話をしていた。 考えて見れば、少しずつ仕事をしていたスチャンが、電話で色々と話していた。
その話が、スンジョの見合いと契約を別にして考えて欲しいがどうしたらいいのかと、ふたりは迷っていたようで、スンジョやヘラのいない所で、話し合っていたのだった。
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