思わぬ同居人 115

ふぅー 自分らしくない行動に、こんなに心臓が爆発しそうなくらいにバクバクしているじゃないか・・・ 

駄目だ、こんな所にいつまでもいたら、ハニがオレの後を追いかけ・・・・ 


コンコン・・コンコン・・スンジョ君・・


運転席側のガラスをノックする音に、顔を向けるとニコニコを通り過ぎてニタニタと笑っているハニが立っていた。 

「何だよ。」

 「帰るんでしょ?私も車に乗せて・・・・」 

「ミナ達とくだらない事でも話していろよ。」 

「いいの、ミナ達がスンジョ君が心配しているから帰りなさいって・・・・・」 

良いも悪いも言う前に、ハニは助手席のドアを開けて、ちゃっかりと車に乗って来た。

 「ミナ達に、奢らされちゃった。結婚のお祝に奢ってと言われて・・・普通はこっちが奢ってもらうのにね。」 

本当は自分の見せたくない姿を、医学部のヤツやミナ達に見られたのも癪に障るが、ハニに見られて追いかけられて来たのが、どうしようもないくらいに自分自身に後悔をした。 


「エーッ、まっすぐ家に帰るの?」

 「別に、どこかに行く予定もないし、面倒だから。」

 「ちょっとどこかに寄って行こうよ。こんなにいい天気なんだし、まだ時間も早いし。」 


「そうだ、ドレスとか指輪とかも決めないと間に合わなくなる。おばさんも、早いうちにふたりで選んでいらっしゃいって言っていたじゃない。」

 勝手に式場だけ抑えておいて、ドレスや指輪をオレ達に行かせるお袋のやり方にムカつく。 

「判ったよ。」 

「んじゃ・・・・最初に指輪を見に行こうよ。」 

日が迫っているから、行かなければいけないと思っていたが・・・・・ 


苦手だ・・・宝飾品店に入るのが嫌じゃなくて、決めるのに時間のかかるハニに会わせるのが苦手だ。 

「これなんかどう?」

 「高すぎる・・・」 

学生の身分で、高い物を買うわけにはいかない。 

親に出してもらうから金額などどうでもいいと言えばそうだが、ハニの気に入ったのを選ぶのはオレにとって結婚指輪が足枷のように思えて仕方が無かった。

 「じゃ・・・・これは?」

 「光り過ぎる。」

 「もう!アレもだめコレもだめって、結局何も決まらないじゃない。」

 「指輪なんてなくたっていいだろう。決まらないのなら、目を瞑ってど・れ・に・し・よ・う・か・な?で決めればいいだろう。」 

大人気ない態度だとは判っているが、本当に面倒になって来た。 


ちゃんと結婚をするのだから、指輪やドレスなんて無くたって、別に関係ないような気もする。


「もう!結局決まらなかったじゃない。それならドレスを選んで、写真を撮らないと。スンジョ君も、タキシードを選ぶよね?」

 「いいよ、この間作ったスーツがあるから。」 

「あれは、仕事で着るスーツでしょう?結婚式にはちゃんとタキシードを着ないと、私がウエディングドレスなのに、スンジョ君は普通のスーツじゃ花嫁の私と合わせないと・・・・・」

 往来の激しいこんな場所で、喧嘩なんてしたくはない。 スンジョは、人が少ない所までハニを連れて行こうと腕を掴んだが、それを振り掃ってハニが本気で怒っているのが判る。

 だけど、スンジョにも考えがあった。

 指輪やドレス選びよりもまだ先にしないといけない事が。 

結婚式が急に決まって、気持ちがそちらに向いているハニに、はっきりと言うにも今の状況じゃこういうしかなかった。 


「お前は判っているはずだろう。オレは人に合せる人間じゃないと言う事を。直前で結婚を止めるカップルの気持ちも判る気がするよ。」

 「な・・・何よ、自分で結婚したいと言っておいて、スンジョ君は結婚を止めるつもりなの?」

 「それならそれでいいんじゃない?まだオレ達は籍を入れた訳でも何でもないのだから。」 

ハニの目に涙が浮かんだのは気が付いていたが、スンジョはそれを無視するように背中を向けてその場を去って行った。 

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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