思わぬ同居人 116
もう泣かせまいと思っていたのに、ハニを泣かせてしまった。 こうでもしなければ、あの浮かれ過ぎのハニを鎮める方法はなかった。
甘い顔をしていれば、アリやカブトムシが甘い汁の臭いを嗅いで近寄って行くように、それが正しい事なのか判断が出来ないだろう。
ハニとの結婚を決意してから、いつかは挨拶をしに行かないといけない場所がある事に気が付いていた。
そうオレが考えていた時に、仕事帰りに親父と飲みに行った時に聞かれた。
「スンジョ、ハニちゃんとの結婚を決めてからお前は良い顔になったよ。」
「そうかな・・・・」
「まぁ、パパ似ではなくてママ似だからと言う顔じゃなくて、以前のように隙のない神経を尖らせているような顔じゃなくて、心にゆとりのある顔と言う事だが。ママの言った通りにハニちゃんに同居してもらって良かったと思うよ。」
悔しいけどオレもお袋に今は感謝していた。
世間を冷めた目で見ていて、出来ない人間を見下していた時もあった。
若い時はそれでもいいが、これから先の人生を過ごして行くにはそれではいけない事も判っていたが、自分ではどうする事も出来なかった。
「で、今日パパがお前と一緒に飲んで帰ろうと思ったのは、その事じゃなくて・・・・・ママが決めた結婚式の日までに、一度訪れて挨拶をした方がいいと思う。」
「ハニのお母さんとおばあさんのお墓・・・・ですよね。」
「そうだよ。そうスンジョも思っていたのか?」
「はい。まだ一度もハニのお母さんとおばあさんのお墓に行った事が無いので。」
「ギドンに場所を聞いて、ハニちゃんと一緒に行ってらっしゃい。お前が好きにになった人の親だ。パパやママとギドンは、ずっとお前たちが幸せでいられるように見守っていくことが出来るが、ハニちゃんのお母さんは娘の成長を楽しみにしていたのに、それを見届ける事が出来なかったんだ。ハニちゃんと出会えて好きになったことに感謝する言葉を伝えていらっしゃい。」
親父はお袋のように雄弁ではないけど、オレが何かを考えているのだと思って、帰りに誘ってくれたんだ。
ありがとう・・・親父・・・
「いらっしゃい・・・・・・まだ準備中・・・・スンジョ君?」
「話がしたいのですけど、いいですか?」
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