思わぬ同居人 119
ハニはグミと一緒にパンフレットで引き出物を選んでいたとギドンから聞いたスンジョは、家からここまでかかる時間を考えて、ハニのお母さんとおばあさんのお墓で言う言葉を考えていた。
意地っ張りな自分で素直になれない所もあるが、あの喧嘩以来一言も自分に話しかけてこないハニも自分と変わらないくらいに意地っ張りな性格だと思っていた。
「パパ!お待たせ!」
勢いよくドアが開くと、ドアベルの音が消されるくらいに大きなハニの声が定休日で静かな店の中に響いた。
ハニは椅子に座って自分の方を見ているスンジョに驚いた顔をした。
「スンジョ君・・・・・」
「ハニ、スンジョ君がハニと一緒に行きたい所があるって・・・・・」
数日前から気まずい思いをしたが、お互い自分にも非ある事が判っているから、その事を持ち出して言い争う気も無かった。
特にギドンのいる前で、この間の事を持ち出すつもりも無かった。
あの喧嘩をした日の夜、ハニはギドンと話をしていた。
「ハニや、男が結婚を口に出すのはただ好きだからとか簡単な事じゃない。ハニとのこれからの長い人生の全てが自分の起こした行動で全部変わってしまう。全てを受け入れる覚悟が無いと、ハニと結婚をすると言う事をスンジョ君は口に出す人間じゃないことは判っていただろ?特に今はまだ学生だ。医学部に復学しても遅れている勉強に必死で追いつかないといけないし、特に今はまだ学生で、独立して生活をするお金も無い。いくら親が生活の事は気にするなと言っても、自分たち学生の身で贅沢過ぎる物は避けたいと思うのは男だ。高々指輪やドレスをどうするのか・・・なんて、それほど重要じゃない。大学に行かない日があるのだからゆっくりとその時に考えなさい・・・じゃあ、行こうか?」
ギドンがそう声を掛けると、スンジョは立ち上がってハニの横を通り過ぎた。
スンジョが用意した車の後部座席にギドンが乗ると、ハニはどうしようかと迷っていた。
「早く乗れよ。」
「うん・・」
元々、ぶっきら棒な言い方をする自分だとは判っていたが、いつもよりも冷たい物の言い方をしていた。
何も行先を言わないで走っているのが気になったハニが、正面を見たままブスッと聞いて来た。
「どこに行くの?」
「行けば判るさ。」
行けばわかる所だから、言わなかったのではない。
言わなくても、何度もハニはこの道をおじさんと通っていたからきっと気が付くはず。
「もしかして、ママとおばあちゃんのお墓?」
「スンジョ君がな、結婚をすることを報告したいと言って。パパは気にしなくてもいいと言ったけど、それではいけないからと・・・・」
「そう・・」
車を降りて、オ家の墓がある小高い場所を見上げて、スンジョとハニをその場所まで連れて行くギドンは、後ろを歩く二人が何か話をして、気まずくなった関係を少しでもお墓の場所に行くまでに良くしてほしかった。
でも意地っ張り同士のふたりが、そう簡単に何でも話せる雰囲気になるとは思えない。
「ここだよ。」
ギドンが、スンジョにその場所を教えると、持って来た花束を墓前に供えた。
手を合わせて、暫く目を瞑っていたスンジョは、今度は目を開けてそこに眠っているハニの母と祖母に静かに話し始めた。
「初めまして、ペク・スンジョです。お義母さん・・・おばあさん、あなた達の大切なハニと結婚します。」
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