思わぬ同居人 121
来る時とは違って帰る時は車の中の空気が違っていた。
別にハニが燥いでるわけでもないし、どちらかと言うといつもよりも静かにしている。
その静かにしているハニにスンジョは落ち着かなかった。
「おい・・」
「なに?」
「まだ、怒っているのか?」
「怒ってない・・・」
怒っていないと言っても、その言い方が何かいつもと違っていた。
スンジョはハニの機嫌を取る気もないし取るつもりも無かったが、ハニが気にしている事が何なのかは判っていた。
「褒美をやろうか?」
「褒美?」
「いらないか?」
「どんな物?」
ハニの質問には答えず空車ランプが付いている地下パーキングに入ると、ハニが急に緊張をして身体を固くした。
「へ・・・・変なことをするんじゃないよね?」
「変な事?」
「その・・・・・」
車を停車するためにスンジョが身体をひねって後ろを向くと、それだけでハニの顔は今にも破裂しそうなくらいに真っ赤になっていた。
その様子がおかしくてスンジョは、ニヤリと笑った。
「停まったぞ。」
「お願い・・・新婚旅行で・・・」
ハニが勘違いをするのは毎回の事だけど、こんなハニをからかうのがオレの楽しみだ。
からかわれたと判って後から拗ねて怒る顔を見るのも、またオレのストレス解消にもなる。
「ここの近くに何があるのか知らないのか?」
「し・・・知らない・・」
ハニが顔を上げた瞬間に、スンジョは素早くキスをした。
「これだけだ・・・さぁ、車から降りろよ。」
呆気にとられた感じのハニは何も言わずスンジョに付いて地上に出るエレベータに乗るが、初めてしたキスでもないのにドキドキと胸が言っていた。
地下とは対照的に明るい地上は、秋の風で街路樹から色が変わった葉が舞い落ちて来た。
先を歩くスンジョに置いて行かれないように走って来るハニの足音を聞くと、また何かを思い出すようにニヤリと笑った。
「ここ・・・・」
「指輪を決めるんだろ?」
「決めてくれるの?」
「オレはどっちでもいいけど、既婚者の印だと言ったのはハニだ。」
喧嘩の原因の一つだった指輪選びをスンジョが自分から動いてくれたことが嬉しかったのか、ハニはいつもの家顔に戻り、蝉のようにスンジョの腕にしがみ付いた。
「うん!!足枷(あしかせ)ね。」
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