思わぬ同居人 124
両親の前で宣言した日から慌ただしく決まった結婚式が明日になった。
デートらしいデートもしないで、その日が来るまで二週間も無かった。
別にデートをしてお互いの考えを知る必要はなくても構わなかった。
オレとハニが一緒に暮らし始めてから4年は経っていたのだし、普通の恋人のようにその人の表面だけしか知らないのとは違い、朝起きてから夜寝るまでほとんど一緒にいたから、良い所も悪い所も見ていた。
「おじゃましまぁ~す。」
「いらっしゃい。明日はハニちゃんのブライズメイドをお願いね。」
「私達を選んでくださってありがとうございます。ハニが緊張をしない様に、私たちが花婿の所まで連れて行きます。」
お袋はハニが緊張をしない様にと、ハニの親友のミナとジュリを選んだのは判るが、何も前日から泊まり込ませてやらなくてもいいのに。
恋人期間も無かった結婚だから、前日におじさんとハニのふたりが水入らずで過ごさせてあげたかったし、オレも明日の式を迎える為に、ハニにちゃんと言葉を掛けたかった。
隣の部屋で燥いでる声が、寝ているオレの部屋にも聞こえて来る。
『うるさい』と前ならきっと言っていた。
ウンジョも同じ気持ちだったのだろうが、今日は何も言ったりはしなかった。
「お兄ちゃん、起きてる?」
「起きているよ。」
隣の声が聞こえるから眠れないのではなくて、いよいよ明日と言う日を迎えるから眠れない。
小さな子供が親と旅行に行くのが嬉しくて眠れないのと同じような感じだった。
「お兄ちゃん、結局ハニを選んだね。」
ハニを選んで嫌だと言う声ではなく、むしろ笑顔で話しているのがスンジョには伝わった。
「でもさ、お兄ちゃんにはハニが似合っていると思うよ。僕はお兄ちゃんが好きだけど、性格にチョッと問題があるから、ハニみたいな人がいいかもしれない。」
小学生の弟にも言われるくらい、オレはハニと似合っていたとは思わなかった。
気持ちが楽になった。
ハニから逃げていた時は辛くて仕方が無かったが、自分の気持ちに素直になると言う事がこれほど気持ちが楽になるとは思っていなかった。
「僕は、ハニと違って頭が良くて美人な女の子を選ぶよ。」
「そうだな。」
そうウンジョの話に返したけど、お前もオレと同じように気が楽な女の子を選ぶと思う。
頭が良いとか見た目が良いとかは、そんなに必要な事ではない。
人として必要な事は、他人を労わり思いやることが一番大切な事だ。
好きな女の子を泣かせて傷つけていては良い事ではない。
「お兄ちゃん、明日はきっと話せないから今言っておくよ。」
「うん?」
「結婚、おめでとう。」
恥かしいのか、ウンジョはスンジョに『おめでとう』を言うと、直ぐに布団を被って目を閉じた。
『おめでとう』と言う言葉が、嬉しいと思う気持ちになる言葉だとはっきりと判った。
それと同じように、よくハニが普通に言う事が出来る言葉がオレには言えない言葉。
ありがとう
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