最後の雨 2
小学生じゃないんだから!
スンジョに言われたことをハニは心で呟き、前の人に続いて大きく深呼吸をして講義室に入った。
他の学部から転科した人は5名。
ハニ以外の学生は転科しない場合の学年は3年で、転科した学年との差は1年だから浪人して入学した人と同じ年齢だが、ハニはそのもう一つ上の年齢。
看護学科2年の学生と自分との年齢差が気になっていた。
「今年は例年になく多い人数の5名の学生が転科して来ました。途中からみなさんと同じ勉強をするわけですから、戸惑うこともあると思います。転科して慣れない学生にはみなさんは出来る限り助けてあげてください。何事も連携が大事です。医学部とは違いますが看護学科も人の命に関わる仕事に就くわけですから、お互いの信頼関係が大切です。早く打ち解けることが出来るように、授業以外でも仲良くしてください・・・・・・さぁ、転科して来た人たちは、空いている席に座ってください。」
看護学科の担当教授が、転科した生徒に座席に付くように合図をした。
男の人がいる・・・・・ヤダななんだか怖そう・・・・
ハニは腕組みをして、自分を睨みつけている男子学生の隣に座った。
そこだけしか空いていなかったから仕方がないが、こちらを小馬鹿にして睨んでいる表情が怖かった。
「こんにちわ・・・・・・オ・ハニですけど・・・・・・よ・・・ろしく・・・・」
その学生はチラッと見ただけで、知らん顔をしてテキストを開いて目をテキストに集中していた。
なによ!こっちが挨拶をしているのだから、それに応えてくれてもいいのに・・・・・教授も言ってたじゃないの、仲良くって・・・・
「・・・るさい・・・・」
「えっ?」
「うるさいって・・言ってんだよ。ブツブツ言うんじゃない、授業に集中できないだろう・・・」
「ごめんなさ・・・・・い」
小さな声でハニは謝ったが、眉間にしわを寄せてテキストを見ているその学生に舌を出した。
転科する前は高校から一緒だった友達もたくさんいたが、ここはパランから上がって来た学生がいても、みんなハニよりも2つ年下。
年齢差感じる・・・・・あの子なんてきれいな肌をしてる・・・・・
あの子は、モデルみたいに背が高いし・・・・あの子は・・・・・
だめだめ、お友達探しなんてしていたら。
小学生じゃないんだから!
ここは夢を叶えるために来たんだから。
「ねぇ・・・・何学部からの転科?」
教授の話に集中が出来ないまま、休憩時間にいつの間にかなっていたことに気が付かなかった。
前の座席の女の子が後ろを振り向いて、華やかな笑顔で親しげに話しかけて来た。
「社会科学部・・・・・・」
「社会科学部?私の友達も社会科学部に在籍しているんだけど、看護学科に転科する人がいるって言う話は聞いていないけどな。」
ハニはドキッとして、声で出た口元を押さえた。
「まさか・・・留年じゃないだろうな。」
またドキッとした。
それも、隣に座る嫌味な奴が話したから。
「り・・・留年なんかじゃ・・・・・・・」
留年ではないが、いきなり4年に転科などハニには出来るわけがないし、みんなより遅れて見つけた夢を実現するのなら、年下の人と同じになってもいいからと2年に転科した。
「いいじゃないのぉ~ギョルはそうやって苛めるから、私たち四人がこうしてみんなから疎まれるんじゃない。
なに?この人・・・・・・オカマ?
「酷いわね!私はオカマじゃないわ。れっきとした乙女よ?」
背が高くて綺麗な顔をしているけど、どう見ても男に見える。
のど仏は出ているし、化粧をしているけどひげが薄っすらと見える。
「ミンジュはね、性同一性障害なの。」
ニュースなどでは聞いて事のある<性同一性障害>でも、さすがに間近にいると妙なところに目が行ってしまう。
「や・・・やぁねぇ~どこを見ているのよ。まだ手術はしていないわよ。」
「はぁ・・・・・・・・」
「私はヘウン、この子はヒスンよ。よろしくね。」
友達が出来るかどうかなんて気にするなんて、きっとスンジョ君だったら「小学生じゃあるまいし」って言うかもしれないけど、一人ぼっちで過ごすなんて寂しいよ。
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