思わぬ同居人 133
済州国際空港は、連休でもないが秋の旅行シーズンで観光客が多かった。
海外から訪れた人や国内旅行の人と、様々な団体がガイドに説明を聞いていた。
「ねぇねぇ、スンジョ君・・・あの子、何だかスンジョ君の小さい時に似ているね。女の子かな?男の子かな?」
ハニが見ている先にいる子供は、可愛らしいワンピースを着ているから女の子で間違いはない。
別にスンジョの小さい頃に似ている顔でもないが、ショートカットでボーイッシュな顔でワンピースを着ているから、ハニにはその子供が女の子なのか男の子なのか判らなかったのだろう。
「あの子は女の子だ。」
「だって、髪の毛は短いし・・・ちょっときりりとした顔していない?」
「していない。」
きりりとしたと言うよりも、その女の子はボーイッシュな顔が自分と似ていないが重なってしまい、披露宴での事を思い出してまたスンジョはイライラし始めた。
ハニが悪いわけでもなく、勿論グミが披露宴でブラックな過去を披露したことが悪いわけでもなく、自分自身があの過去を一生秘密にして行きたかっただけだ。
「待って・・・・」
スンジョがターンテーブルから二つのキャリーバックを取ると、ハニを置いてサッサと予約しておいたレンタカーの手続きのためにカウンターに歩いて行った。
レンタカーの鍵を受け取り応対した店員に付いて、車庫までハニを無視するように歩いて行った。
傍から見ればカップルが喧嘩をしたように見えるかもしれないが、そんな事が気にならないほどスンジョは思い出した披露宴が、グミに任せっぱなしにしていた事を後悔していた。
海岸沿いの道路を走っていると、ずっとイライラしていた事がバカバカしくなって来たが、いまさら笑顔でハニと話しをすなんてスンジョに出来るはずはなかった。
「ねぇ、機嫌を治してよ。」
治っているけど、オレの性格るを知っていれば素直にお前とホテルまで楽しく行くと思っているのか。
それでも、ハニの楽しそうな顔と少し音の外れた歌を聞いていれば、難しい顔をしていたスンジョも顔がほころんで来た。
宿泊を予約していたホテルに到着をすると、チェックインをして部屋の鍵を受け取る。
宿泊名簿にスンジョの名前と、同行者の欄にハニの名前を書き『妻』と書いたのを見てから、ハニは嬉しくて仕方がないと言った顔をしていた。
「ねぇ・・・腕を組んでもいい?」
「どうぞ・・・」
嬉しそうにスンジョが空けた腕に自分の腕を絡ませると、ピッタリとくっついて来た。
「そんなに嬉しいのか?」
「うん・・・スンジョ君は嬉しくないの?」
「別に・・・」
「デートらしいデートもした事が無いし、手を繋いだのだって一度あるけどデートではないし。」
ヘラの後を付けて来た時にトラブルに遭って逃げた時の事を言っているのだ。
「デートもした事が無いし、手を繋いだことも腕を組んだ事が無くても、キスはしただろう。それに結婚もしていない時に、同じベッドで寝た仲じゃないか。」
「チョ・・・チョッと、そんなことここで言わなくても。」
「いいじゃん、オレ達結婚したんだから。結婚したらキス以上のことだってするんだし?」
「スンジョ君って、そういう事を言う人だったの?」
スンジョは久しぶりにハニをからかってみたくなった。
「オレだって、健康的で体力のある21の男だ。二人っきりになったら、ハニが思っている以上のことをするかもしれないぞ。」
「やだ・・やだ・・・私、経験ないもの。」
「嘘だよ。オレだって経験が無いから。」
そうさ、この新婚旅行から帰ったらすぐに休学している間に遅れた勉強をするのに忙しいから、三泊四日のハニと二人っきりの時間を大切にしたいよ。
どうせ家に帰ればお袋が色々聞きたがるだろうし、ハニを今以上に自分の方に引き寄せるだろうから。
そんな時に向こう側から、言い争うと言うより一方的に男性に怒りながら歩いて来るカップルがいた。
騒々しいそのカップルに会った事で、三泊四日の新婚旅行が楽しく過ごせたと言う思い出になるのか、急にスンジョは疑問になって来た。
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