思わぬ同居人 139
初日に出会った、面倒臭い新婚夫婦。
特に女の方は何かに付けてオレ達を見つけては邪魔をして来る。
どう見てもあの二人にはアフリカ博物館など興味があるようには見えないが、どこでオレ達の行動を知ったのか不思議で仕方がない。
オレの腕を掴んで博物館内を歩いて、ふたりでどこかの博物館に行こうと誘って来た。
新婚旅行の先で、新婚旅行に来ている夫婦の夫を誘惑して不倫をしようなんて思う女も女だが、それを許している夫も夫だ。
おい、ハニ!お前もオレが他の女に誘惑をされているのを何とも思わないのか!
と、そう思っていた時に、タイミングよくお袋がオレとその女の間を通り過ぎた。
思った通り、オレ達の新婚旅行を盗み撮りに来ていた。
今回だけは、お袋のストーキングも役に立ってくれそうだ。
その一瞬離れた隙にハニがオレの腕に自分の腕を絡ませることが出来た。
こういう時はお袋の行動に感謝をすることが出来たが、何のためにオレ達の旅行に隠れて付いて来たのか。
まぁ、大体想像は付くが、ウンジョに学校を休ませて連れて来ては可哀想だろう。
「今日は、アフリカ博物館に連れて行ってくれてありがとう。」
「別に礼を言うほどのことでもないだろう。お前は博物館とか今まで行った事はあるのか?」
「ない!!」
「『ない』って、得意気に言うことはないだろう。」
得意気に言うハニのその子供みたいな顔が、可愛いと思うのはオレだけだろうし、オレだけがその顔を見る事が出来る権利があると思うと・・・・・
急にスンジョの口元が緩んだのをハニは見逃さなかったが、それは何が原因で口元が緩んだのかは、ハニは気が付かない。
「博物館も難しく考えると、眠くなりそうかもしれないけど、説明は難しく考えなくていいよ。それに、あそこに連れて行ったのは、あの壁面を人が作ったのだと言う事を見せてあげたかった。」
「うん、あれは素晴らしくて感動したけど、あの女が来て・・・・・・・あ~ムカつく!」
お前ばかりじゃないぞ。
オレだって、ムカついたのだから。
「今日は、車に乗って移動した時間が長いから疲れただろう?」
「そうでもないよ。まだ元気だから。」
ハハハ・・・まだ元気って・・お前その意味は聞きようによったら結構大胆にも取れるぞ。
トッコ・ミナたちと話していた事が、オレの部屋まで聞こえていたなんて知らないだろう。
アイツらから教え込まれた知識通りに行くとは限らないから。
「先に風呂に入って来いよ。明日は、ハニが行きたい所に連れて行ってやるから。」
「本当?」
「ああ、今日はオレがハニに見せたかった博物館に行ったのだから、明日はお前が行きたい所に行くから。」
嬉しそうに風呂に入る準備に行くハニの姿を、スンジョは無表情に見ていた。
新婚二日目にして、やっと二人だけの夜を迎える事が出来ると思うと、これからの初めての事に緊張をしていた。
「本当に先に入ってもいいの?」
「いいよ。髪の毛をハニが乾かしている時間に、オレが風呂に入れるから。」
こんな会話をこれから先何十年も続くと思うと、スンジョもハニも何年も一緒に暮らしているのに違った気持になって来た。
風呂から上がり多少緊張をしているスンジョと、身体を硬直してかなり緊張しているハニが、ソファーに座って夜景を見ているように見えるが、本当は別の事を考えていた。
そんな時に、部屋のドアをドンドンと強くノックをする音がした。
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