最後の雨 6

看護学科は勉強以外にも思った以上に覚える事がいっぱいで、進学年度が始まって日が浅くて、まだまだ特に親しくしている人もいないから、休みの間も誰かと話す事も無くてテキストを開いていた。

「ね・・・・ねぇ・・・・・ハニ・・・・・」

呼ばれて振り返るとヘウンとヒスンとミンジュが立っていた。

「もし誰かと約束していなかったら、ランチを私たちと一緒に食べない?」

転科してからは、特に何かなければ学食でランチを食べているスンジョの所に行っていた。

「いいの?」

「一人で食べるよりも、何人かで食べた方が美味しいでしょ?」

「ありがとう。途中から入ったから、一緒に食べる人がいなくて。」

「みんな、そんなもんよ。ハニは年上だから、お互いに誘っていいのか判らないし。」

途中からの看護学科で、すでにグループが決まっている仲間に入る事は、寂しくて勇気がいる。

教科書類を纏めてカバンの中に仕舞うと、ヒスン達の歩いて行く方に置いてきぼりにならないように小走りに付いて行った。

ランチの時間になると学生で混んでいる学食は、グループで座れる席を取るのも大変だ。

お昼を少し過ぎただけでも、空いている席はほとんどない。

いつもスンジョの姿を見つけてハニは走って行っていたから、その様子を知らない事と、スンジョが自分の鞄で座席を確保していた事も知らず、ハニが来ると椅子に置いてあったカバンをどかして座っていた。

「どうしたの?」

「凄いね・・・・・席が一つも空いていないよ。」

スンジョの周囲だけは、いつも誰も座らないから、空いていることが多い。

今日もスンジョの座っている所が、3席だけ空いていた。

「何してるのよ、こっちよ。」

ヘウンに腕を引っ張られたハニは、人と人の合間を通ってヘウンが連れて行ってくれた場所は、偶然にもスンジョの真後ろだ。

「あの・・・・・・」

「今日は良い席を取れたのよ。ホラ、ぼけっとしていないで、ペク・スンジョの観察よ。」

ヒスンが何やら手帳に書き込んでいた。

「何をしているの?」

「観察!あらゆる癖や動きを記録していくのよ。記録してそのデータだけをずっと集めて統計を取っているの。」

ハニもそんな風に観察をした事があったが、スンジョを観察したのはいつだっただろう。

片想いから始まった、スンジョとのつながり。

高校生の時の同居から大分経っているが、こうして観察をしているとまた違ったドキドキを感じた。

キャーキャーと言いながらミンジュとヘウンとヒスンは騒ぎながら手帳に書き込んでいた。

ハニはスンジョの方をチラッと見ながら、ミンジュやヘウンのしていることを他人事のように眺めた。

スンジョと背中合わせに座っていたギョルが身体を起こして、ハニの方をギロリと睨んだ。

「お前も、こいつら達と同じで、医学部の男子学生狙いで看護学科に来たのか?」

違うとも言えず、乾いた笑いで誤魔化していると、まるで喧嘩を売っているような言い方で聞いて来た。

「私は・・・・そんな男子医学生とか人目当てではないわ。だって私は男子学生とかには、全然興味はないもの。」

そう、ハニはスンジョ以外の人には全く興味がなかった。

誰が、どんな病院の息子だとか、何科の医師を目指しているとか、スンジョ意外に全く興味のないハニにはどうでもいいことだった。

「どうだかな・・・・・興味がないとか言って、転科で看護学科に来る人間なんて信じられないな。」

ギョルだけは他の3人とは違って、初日からハニに対して攻撃的な言い方をしていた。

苦手だな、この人。

どうしてこんな言い方ばかりを私にするんだろう。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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