最後の雨 7

「急がないと・・・・・・教室が変わったなんて知らなかった・・・・・・・・」

ハニはバタバタと廊下を走っていた。

別に授業を忘れていたわけじゃないが、新しい学生証が出来たと連絡があって、授業の合間に学生課に行っていたのだ。

既に授業が初まって10分が過ぎている。

途中から看護学科に入ったハニにしたら、この10分は貴重な時間だ。

静かに後ろのドアを開けて、身体を小さくして指定の席まで身体をかがめて歩いて行った。

「すみません・・・・・・すみません・・・・・・・」

何度も謝りながら自分の座る場所までたどり着くと、安心して教科書を開いた。

「あの・・・・・どこ?」

恐る恐る隣の席に座っているギョルに聞くが、全く無視されてしまった。

後ろの席を振り返り、ミンジュは何も聞かず教えてくれた。

「ありがとうミンジュ。」

礼を言って、正面を向いた。

何気なくギョルの手元に置いてある教科書を見ると、どのあたりを今やっているのか教えてくれた。

ハニはクスッと笑って、コレが素直になれないギョルの優しさだと思った。

それはまるでスンジョのように、人に見せることの多分ないだろうと思う優しい気持ちと同じだった。

「どうしたのよ、授業の始まる前にどこかに行ったと思ったら遅刻して。」

「うん、私の新しい学生証を取りに行って来たの。時間は余裕があったんだけど、教室が変更になっていたなんて知らなくて。」

ギョルの目がイラッとしていることにハニは気が付いていなかった。

「ところでさ・・・ハニは、今日これから予定はあるの?」

「予定?んー」

特に予定はなかったが、家に帰ってスンジョの顔を眺めていたいと思っていた。

この数日のスンジョは、ハニが眠ってから家に帰宅して、朝は朝でハニよりも早く起きて大学に行っていたから、話をするどころか顔も見ていなかった。

今日は朝起きて、ハニが朝食を取る時に、グミからスンジョの伝込んで早く家に帰ることを聞いた。

「スンジョにね、忙しいからって毎晩遅い帰りは身体によくないし、ハニちゃんが可哀想でしょって言ったの。そしたら、判った、今日は早く帰るよ・・・・・・たまにはハニに看護学科に移ってからの話を聞くって。」

それを聞いたから、出来ればどこにも寄らずに帰宅したかった。

「用事有った?誰かとデートとか?」

「デートだなんて・・・・・」

バン!

両手を机の上に叩きつけるようにしてギョルが立ち上がった。

「無理に誘わなくたっていいだろう、オレは先に行っているから。」

相変らずニコリともしないギョルは、ハニはどうしても苦手だった。

「何よ!ギョルの奴ったら・・・・・最近イライラしてさ。」

それがハニは自分のことでギョルがイラついていると、何となく気が付いていた。

今日だけじゃなく、教室を間違えたり、資料として使っている医療器材の保管場所を間違えたり、ハニが気を付けようと思えば思うほど失敗ばかりの連続だった。

途中からこの学科に移ったから、誘われたらその誘いを受けて、少しでもハニは仲良くしようと思っていた。

「いいよ、大した予定じゃないから・・・・・どこに行くの?」

そう大した予定じゃない。

家に帰ればスンジョと今日は沢山話が出来る。

別に先に家に帰って待っていなくてもいい。

早く帰ると言っても、スンジョはみんなとの研究を途中で止めても、早く帰ることはないから。

「ペク・スンジョの家」

へっ?

「私達ね、この看護学科の中でペク・スンジョのペンクラブを作ったの。」

「会長がヘウンで、副会長がミンジュ・・・・・ヒスンは会員№3でギョルが会員№4なの。ギョルは義理で入ったからあまり話題に加わらないけど、ハニあんたってペク・スンジョみたいなイケメンがタイプだと思うの。まぁ・・・・ペク・スンジョに興味のない女(ひと)は、いないと思うけど。」

スンジョ君に興味のある女(ひと)はいて欲しくない・・・・・・・けど、この会に参加しないとスンジョ君を誰かに取られちゃうかもしれない。

「私もその会に入れてもらえると・・・・・嬉しいんだけど・・・・」

ハニはドキドキしながら、仲間に加えてもらおうとヘウンに聞いた。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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