最後の雨 8
ハニがスンジョのペンクラブに、入れてほしい理由はただ一つ・・・・・・誰にもスンジョを取られたくないと言う事と、結婚してもまだスンジョに愛されていると言うことに自信がなかったから。
「勿論、いいに決まっているでしょ。」
ヘウンは気さくに年上のハニと接してくれる。
それがハニには怖かった。
ヘウンは目鼻立ちがはっきりとしている美人なだけではなく、出る所は出て凹んでいるところは凹んでいて、細くて長い足のモデル並みの体型。
ヘウンだけではなくヒスンやミンジュも怖い存在。
ヒスンは白衣の天使という言葉がぴったりな、心まで真っ白な人形のように可愛い女の子。
ミンジュは・・・・・・・・・・背は高くて、細面で綺麗な顔をしている。
ただ、ミンジュの場合は、性別が女ではないと言うところが心配。
女ではないから、スンジョも心を許してしまいそうな気がハニにはしていた。
それよりも、もし自分よりも年の下の女の子たちが、スンジョに告白をしたら、ふらっと浮気どころか本当に好きになってしまうかもしれないと思っていた。
ただそれだけの理由で、ハニはスンジョの私設ペンクラブの会員になった。
「さぁ!行くわよ!」
「どこに行くの?」
「ペク・スンジョの家よ。学校とは違って家で寛ぐ(くつろぐ)彼を見て見たいわ。 運が良ければ彼の愛妻とお近づきになれるかもしれないし。」
「主人が病院で寂しそうにしていたら、励ましてあげてね・・・・・・なんて言われるかもしれない。」
言うわけないじゃん・・・・・スンジョ君は寂しいなんて思わないし、私だけしか興味がないんだから。
「ハニ?何をブツブツ言ってるの?もうすぐ着くわよ。」
「着くって・・・・・どこに?」
みんなと一緒に何も考えずに、ギョルの運転する車に乗り込んだところまでは、記憶がはっきりとしているが、その後からの記憶がぷっつりと切れていた。
「キャー!!愛しのペク・スンジョ様よ。」
「スンジョ君は私だけの物よ! 」
ミンジュの叫び声に対抗するように、思わず大きな声でハニは叫んでしまった。
呆気にとられるように、ヘウン達は口をポカンと開いていた。
「あんた、そんなにきっぱりと言ったら奥さんに失礼でしょ。」
そうだった・・・・・みんなは、私がスンジョ君と結婚をしていることは知らないんだ。
「確か・・・あのレンガ塀が愛しのスンジョ様のご自宅よぉ・・・・・・あら・・・あの子・・・・・」
「ああ、あの子スンジョ君の弟のウンジョ君。」
ハニは思わず声に出してしまった事を隠すように手で口を押えた。
「ハニ・・・あんた、知っているの?」
「知っていると言うか・・・・・・・・うちのパパのお店に食べに来た時に・・・・・・スンジョ君・・ペク・スンジョ君にお兄ちゃんって言っていたから・・・・・・・」
「ふぅ~ん」
みんなはハニの言い訳に怪しむどころか、あまり気する様子も無かった。
「じゃあさ・・・・・彼が家に帰って来ているのか、ハニ・・・新メンバーとしての最初の仕事として、あんたが聞いて来て。」
一応は抵抗をしてみたが、みんなにスンジョと結婚していることがバレたら、何か言われるのが怖く思い、急いで車から降りてウンジョの所に走って行った。
「ウンジョ君・・・・・ウンジョ君・・・・・・」
車の方に聞こえない程度の小さな声でハニはウンジョを呼び止めた。
「なんだよ!そんなに小さな声じゃ、何を言っているのか判らないだろう。」
「いいから・・・・・出来れば、他人のふりをして・・・・」
「出来ればふりじゃなくて、本当の他人になりたい。」
小生意気なウンジョの頭を小突きたかったが、ヘウン達にはウンジョとは全く関係のない他人のフリをすることにし、引きつる笑顔を作っていた。
「ちょっと・・・・・お願い・・・・・・・」
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