最後の雨 9
「勝手にすればぁ・・・僕にしたら、オ・ハニとは他人でいたいからな。」
そんな言い方をしても、それがウンジョのハニとのコミニケーションだと判っていても、頭を叩きたくなるくらいに憎たらしく思える。
口をポカァーンと開けたハニに、アッカンベーをしながらウンジョは門を開けて入って家の中に入って行った。
「ハニ・・・・ハニ・・・・」
物陰からハニを呼ぶ小さな声に振り向くと、ヘウンが手招きをしていた。
「何だったのよ・・・・ペク・スンジョの弟が言ったことは。」
「えっと・・・・あの・・・・・・」
「隠し事は無しよ。早く言ってよ。」
ヘウンやヒスンが顔が付く位に近くに来ても特に気にならないが、ミンジュが近くに来るといくら事情が事情でもやはり女の子ではないと思えて・・・・・・・
「ぶっ!」
我慢しきれずにハニはミンジュの顔めがけて吹き出して笑ってしまった。
「なによ!汚いわねぇ・・・・・・もぅもぅもぅ!!!」
「だって・・・・ミンジュは男なのに、まるで女の子みたいな顔をして必死になってる。」
「女の子よ!私は女の子よ!」
自分を女の子と主張するミンジュの顔が、ハニには可笑しくて笑いが止まりそうにない。
「おい、来たぜ。」
ギョルの声にペク家の門の方を見ると、スンジョがガレージ前に停まった車から降りた。
「あれ?今日はすぐに、ガレージに入れないのかなぁ・・・・・・」
「何で、ハニがそんなことを気にするのよ、彼の奥さんでもないのに。」
よっぽど言ってしまおうかと思うが、今までの経験からすると、スンジョの妻は自分だとは言わない方がいいことはハニもわかっている。
「!えっ??奥さんも一緒に帰って来たわ。」
奥さんも一緒って・・・・・ここにいるんですけど・・・・・
ハニはガレージ前に停めてある車の方を見ると助手席のドアが開き、赤いハイヒールを履いた足が見えた。
だ・・・・・誰?
長い髪にスレンダーなナイスバディに、全身ブランドづくめの女性。
今のスンジョが絶対に好きにならないタイプの女性。
「やっぱりね・・・大学一のビジュアルのペク・スンジョが選ぶだけの奥さんじゃない。」
背の高いミンジュの後ろでは、ハニがいる所からは赤いハイヒールを履いた足しか見えない。
ほんの少しだけ見えた横顔は、まぎれもなく絶対にスンジョが選ばないとハニが自信持って言える、ユン・ヘラ。
「ヘラの事は好きにならなかったの?」
新婚旅行での最後の夜に聞いたことがあった。
「付き合うには楽だが、自分と似ているからハニに対する時の自分の中で沸き起こった感情はなかった。ただ、お前を見ているといつまでも飽きないから・・・・飽きないしずっと見ていたいし、ハニと一緒にいると喜怒哀楽がこういう物だと知ることが出来た。これが好きだと言う事なら、ヘラに対しては一度も楽だが楽しいと思ったことは無かったから好きにはならなかった。」
あの言葉は嬉しかったが、今目の前にいるスンジョはヘラと楽しそうに話していて、二人が夫婦だと言えばきっと誰もがお似合いだと思うくらいに、綺麗な二人だった。
「私・・・・・帰る。」
「ハニ、ショックだよね。あのペク・スンジョの奥さんがあんなに美人なんだから。気を落とさないで・・・・・運が良ければ愛人にでもなれるかも・・・・・・・送って行くよ。」
「近いから歩いて行く・・・・・・じゃ・・・・明日。」
近いからって・・・・・目の前じゃない・・・・裏口から入って行けば、誰にも判らないわよね。
愛人・・・か・・・・
堂々とペク・スンジョの奥さんは自分だとも言えないし、裏口から入ろうとするのだから、私は愛人向きなのかもしれない。
ハニは勝手口のドアを開けて、静かに入って行った。
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