声を出して 4
自分の部屋に帰れと言われて、居座ることなくハニは帰って行ったが、こうもあっさりと出て行くとは思ってもいなかった。
「ったくアイツは・・・」
布団に落ちているスナック菓子のかけらを、ハンドクリーナーで吸い取り、しわになったシーツを伸ばすと、かすかに残るハニの匂い。
もう少し匂いを感じていたいと思って、布団に顔を近づけた。
「あ~やっと自分の部屋に戻れたぁ~」
ウンジョが勢いよく部屋のドアを開けて入って来ると、スンジョは布団から顔を上げた。
「あ~バカハニの匂いがする!」
自分がしていた事を、ウンジョに気が付かれていないか焦ったが、自分の顔に出ていないと思っていた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
スンジョの顔をまじまじと見て、ウンジョは不思議そうにしていた。
「顔が赤いよ?雨に濡れて熱を出したハニが、この部屋で寝ていたからうつったの?」
「まさか・・お兄ちゃんはそんな柔じゃない。布団を直していたから、動いて赤くなったのだろう。でも、よかったなウンジョ。自分の部屋に戻って来れて。」
「うん!」
このオレが顔に出るなんて、ハニのせいでオレも随分と変わったのだな。
さっきまでハニが横になっていた場所を見てクスッと笑ってしまい、焦って口元を拭う仕草をして自分を誤魔化した。
「お兄ちゃん、ハニの事をいつから好きになっていたの?」
「さぁ・・・・いつからだろう。お兄ちゃんにも判らない。」
いつからハニを好きになったのか、本当に自分自身判らない。
ジュングに言ったな。
明日には好きになるかもしれない・・・・と
あの言葉を言った時は、もうオレはハニを好きだったのかもしれない。
震度2の地震で新築の家が崩壊したニュースを親父から聞いて、随分と運の無い人がいるものだと思っていたら、『パパの昔の親友の家が壊れたんだ。その親友にはスンジョと同じ年の娘がいて、何と同じパラン高校だそうだ。オ・ハニと言う女の子を知らないか?』 知らないも何も、その前日にオレはハニからラブレターを貰ったのだから。
人を自分の領域に入れるのは好きでなかったのに、親父が同居させてもいいのかと聞いて来た時に、簡単にそれを受け入れた。
考えたら、オレが他人に興味を持ったあの時から、ハニを好きになっていたのかもしれない。
そうであっても、オレは絶対に声に出してハニにあの時から好きだったのだとは、言うことはないだろう。
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