声を出して 13
間に合わない
急いでなんとか覚えようと思っても、料理は簡単に覚えて上手くなるわけでもない
「どうして、私は料理人の娘なのに・・・・・ダメダメ、卑屈になっては・・・ママなんて親が料理人とかよりも夫も料理人なのに、全く出来ないからママの血を引いてしまったと思うしかないね。それに、私の舌はミシュラン並に肥えているから、きっとそのうちに美味しく出来るようになるから。」
自分で声に出して納得をしながら、夕食の手伝いに行くために髪をシュシュで結んで、キッチンに降りて行った。
「おばさん、遅くなりました。」
おやつの食器を洗って拭いて、それを所定の棚にしまうと、グミが食材を並べている横に急いで立った。
「ハニちゃん、料理は多少下手でもいいのよ。愛情をこめて作れば、それが伝わるから。」
「そうなんですけどね・・・おじさんが入院している時に、スンジョ君とウンジョ君が私の作った食事を食べてお腹を壊したらどうしようって・・そればかり思っていました。愛情はこめていると思うのですけど・・・」
「大丈夫よ。腐った物じゃなければ、美味しくないだけで、食べられない訳じゃないと思うから。それに、ハニちゃんの舌はミシュラン並でしょ?味覚さえあれば、調味料の分量さえ間違えなければ・・・」
必要な調味料を目分量で小皿に入れ、サクサクと野菜を切り始めると、ハニがその手元を見ている事に気が付いてグミは包丁をハニに渡した。
「野菜を切ってみて。大きくても不揃いに切れてもいいから・・・・・料理自慢と思われているけど、私が作るのは名前がない料理。」
「名前がない料理?」
「家庭料理・・・と言っていいのかな?私が思いついた料理が殆ど・・・フライパンを熱して・・・・オリーブオイルを少し多めに入れてね。」
グミに傍で指示を出してもらいながら、ハニはメイン料理を無事に作り終った。
その合間に、グミは他の料理とデザートを作り、盛り付けはいつものようにハニがしていた。
「みんなに内緒で、食べてもらいましょうね。料理は火加減・味加減さえ間違わなければ失敗はしないわ。野菜の切り方や大きさなんて、そんなに気にしなくてもいいの。他に作ってみたい物があったら言ってね。教えてあげるから。」
母が生きていたら、こんな風に教えて貰えたかもしれないが、ハニの母は料理が全くできなかった。
教えてくれるとおばさんが言ってくれたのなら、あの料理をリベンジして見ようか。
「おばさん・・・・・教えてほしい料理があるんです。」
「どんな料理?」
「ハワイアンロコモコ・・・・・」
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