最後の雨 13

「それでは今日は、血圧測定をして採血の練習です。それぞれ隣同士の人と組んで練習してください。」

講師に言われてハニは隣を向いた。

隣に座っている人物は頭を押さえてがっかりした顔をしていた。

「よ・・・よろしくね・・・・・・・」

「ハァーッ」

隣の人物の顔を見るだけでも憂鬱になるのに、検査の練習と言われ、これ見よがしにため息を吐かれると、余計にプレッシャーを掛けられ緊張をしてしまう。

「ギョルとハニは、運命の相手なのかも。」

あっけらかんと言うミンジュを睨み、ギョルは思いっきり向う脛(むこうずね)を蹴った。

「いったいじゃないの!」

いつもは女の子らしい声で話をするミンジュも 、さすがに痛さには耐えられなかったのか、太くて大きな声で怒鳴った。

「そこ!ミンジュとギョル・・・・静かに!」

「はーい、ほら・・・講師に睨まれたじゃない 。」

「お前が余計なことを言うからだ。」

ハニはギョルの意外な面を見た。

いつもは、しかめっ面をしているのに、ミンジュにからかわれただけで、顔を赤らめていた。

「クスッ・・・・」

そんなギョルを見て、ハニは笑わずにはいられなかった。

「何だよ、何が可笑しいんだよ。」

「ギョルって意外とかわいいんだ・・・・・・・」

「うるさい・・・サッサと血圧を測って採血しろよ。」

シャツの腕をまくって、ハニの前に日に焼けた腕を差し出した。

自分が計測をする側なのに深呼吸をしてカフを巻き、大きく頷いて覚悟を決めた様に加圧を始めた。

だが、どんなに加圧しても血圧を測定することが出来ない。

「あれ?聞こえない・・・・・おかしいな・・・・もう少し空気を入れた方がいいのかな・・・・ 」

ブツブツと言いながら、相手がギョルだと思うとまた何か怒鳴られるのではないかと思いながら不安そうにハニは加圧して行った。

「あっ・・・・大変・・・脈が・・ギョルが死んでる・・・・・・・」

眉間に皺を寄せて、怒りと苦痛に歪んだ顔は真っ赤になり、今にも破裂しそうだった。

「くっ・・・・・・・・て・・・・・・て・・・・め・・・・・・ッてめぇ・・・・・てめぇ・・・オレを殺す気かっ・・・・・・・」

窓ガラスが割れるくらいの大きな声で叫んだギョルは、ハニから送気球を取り上げた。

「ほら!そこの二人!ハン・ギョルにオ・ハニ!看護師になる人が殺すなんて言葉を言うものじゃないでしょ!もっと静かに血圧を測りなさい。」

「すみませ・・・・・ん」

確かにカフを外したギョルの腕は締め付け過ぎたのか、くっきりと色が変わっていた。

「ゴメン・・・・・・聴診器から何も聞こえなかったから・・・・・・・」

「ったく・・・・予測最高血圧が、オレは300か?普通に考えても120か150だろ!それに聴診器を挟まないでホールドした値が判るか!」

グイッとギョルはハニの腕を引っ張った。

「な・・・・何をするの?」

「お前の血圧を測るんだよ!!」

「仕返しをするの?」

「仕返しなんかするかよ。この騒動で、廻りを見て見ろよ・・・・」

ハニはギョルに言われて、教室の中を見回した。

既に他のコンビは、採決を終えて採血管に血液を入れ終っていた。

「お前は居残り決定だな。」

ギョルの指す針は痛くなくサッとさしてサッと採血をした。

「怖くない?」

「なにがっ?」

「人の腕に針を刺すなんて・・・・・・・」

「そんなこと看護師になる奴が考えるか?お前・・・まさかと思うが、好きな男がいるから看護科に移ったんじゃないだろうな。」

ハニはどきりとした。

転科した理由は、スンジョと同じ職場で働きたいから。

きっとそうだなんて言ったら、ギョルはまた大きな声できっと怒鳴ると思うと、こう言うしかなかった。

「ち・・・違うわよ。純真に看護師になりたいと思っただけよ。」

いつかはばれるハニの秘密が、一つ増えて二つになった。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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