声を出して 47
人の気持ちは誰にも判る事ではない事は判っている。
長い間、父と娘と二人で生活をして来たのだから、建築ミスがなければこの家に来ることも無く、まさか大学在学中に結婚をするとは思っていなかったはずだ。
ハニとおじさんの親子関係は、オレの家族の親子関係とは違って、お互いに助け合い励まし合い10年以上を過ごして来ていた。
「いい親子関係だな。」
「なに?」
秋風に当たりながら、ハニと並んでバルコニーから外を見ていた事を忘れていた。
「お前とさ・・・おじさんの親子関係の事。」
「ふふ・・・今日のスンジョ君、何だかいつもと違う・・・・」
「違う?」
「うん・・・さっき言った事は、心の中で言っていた言葉でしょ?」
スンジョは何も言わず、クスッと笑っただけだった。
そんな笑いから漏れた声でも、ハニにはそれがスンジョの言葉だと判っていた。
「よく言うよね。一緒に暮らしていたり、近くにいるとその人と似て来るって。」
「そりゃ・・・困るな。」
「困る?」
「ハニの頭と似て来たら・・・・」
プゥッと膨れるハニの頬を期待していたが、それの裏をかかれてハニはクスッと笑った。
「確かに・・・」
妙に納得をしているハニを見るのも結構気持ちがいい。
これから先、ハニと喧嘩もするだろうし、気持ちもすれ違う事もあるかもしれない。
自分が目指す医師になるまでに、ハニを置き去りにして勉強に夢中になるかもしれない。
忙しくて相手にしてやれない事もあるかもしれないし、寂しい思いをさせてしまうかもしれない。
オレ自身が、疲れてしまう事もあるかもしれないが、横にハニがいればきっとどんな困難な事も乗り越えられるような気がする。
「どうしたの?急に無口になって。」
「もともとオレは無口だ。ハニみたいに不必要にベラベラと話す事はない。」
「ふんっ!」
オレは声に出して言葉としてハニに伝える事が出来ない。
きっとハニはその事で怒ると判っているけど、そんなオレをこれからもよろしく。
「ほら、もう寝るぞ。あと二日学校に行ったら結婚式だ。その後、新婚旅行とかで授業に出られない時があるから、あと二日間集中して休む間の授業のノートを誰かに頼んでおけよ。」
「あ~面倒・・・休めるのに、スンジョ君は勉強の事ばかり・・・スンジョ君に怒られる前に、寝ないと・・・・・」
おどけるようにスンジョの隣から離れて、ハニは自分の部屋に引き上げて行った。
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