最後の雨 18

「ハニちゃん、スンジョは遅くなるの?」

スンジョからの電話を切って、ため息を吐いていると悲しそうな顔をしたハニを心配してグミが聞いて来た。

「医学部の人たちと飲んでいるんです。」

「珍しいなぁ、一度も飲んで帰って来たことなんてないのに。」

「パパ、スンジョだってもう大人ですからね。」

いつももスチャンが言うことを今日はグミが言った事に、可笑しくて三人は殆ど同時に笑った。

「お母さん、お父さん、先に寝てください。私がスンジョ君を起きて待っていますから。」

「何を言っているのよ。ハニちゃんは明日学校があるんでしょ?」

「大丈夫です。学校に行っているから家事が苦手で奥さんらしいことは何も満足に出来ないのに、スンジョ君が帰って来るのを待ちますから。奥さんなんですから、それくらいしないと・・・・・」

「そう?それじゃぁ、休ませてもらうわね。」

「ハニちゃんも適当に休むんだよ。スンジョは家の鍵を持っているから。」

スチャンとグミにお休みの挨拶をして、ハニはソファーに座って雑誌を開いた。

「どうしたんだろうスンジョ君。飲んで帰るなんて今まで一度もなかったのに・・・・・・・・誘われても断ってばかりいたから、たまには付き合いっていうものなのかな?」

ハニはスンジョが飲んで帰るなんて言うことが不思議だったが、グミもスチャンも特に気にしているようすもなく、コレが大人の付き合いだと考えると、飲んで帰って来ても大丈夫だろうと思っている。

しかし、どんなに遅くなっても帰って来るスンジョが、酒を飲んで車を運転して帰って来ることは出来ない。

深夜近い時間に、公共交通機関は既に最終の便が出た後。

タクシーで帰るにしても、帰りたいと思った時間に直ぐにタクシーに乗れるわけでもない。

ハニに、店まで迎えに来るように連絡をしても、ハニは運転免許がないから運転が出来ない。

そんな時、玄関のドアが開いた。

「お帰り!私ね、スンジョ君の帰りが遅いからすっごく心配したよ。飲んで帰るなんて今までなかったから・・・・・・・あっ・・・・」

玄関に立っていたのはスンジョではなく、驚いた顔をしたギドンが立っていた。

「心配してくれるのは嬉しいが、パパは仕事の後に店では飲んで来ないよ。それはハニが知っている事だと思うけど?」

「ごめんなさい・・・パパだとは思わなかった。」

「誰が帰っていないんだ?スンジョ君か?」

「うん・・・・医学部の人と飲んでるって、電話を掛けたらそう言っていたの。」

「そうっか、男はたまには外で飲まないと、付き合い悪いって言われるからな。ハニはスンジョ君が帰って来るまで起きているのか?」

「そうだよ。だってスンジョ君の奥さんなんだもの。」

「そうだな、遅くなったからって、怒るんじゃないよ。社会に出たらもっとそう言う機会があるから。じゃ・・パパは休むね。お休み。」

「お休みなさい。」

ギドンが部屋に行ってしまうと、リビングはシンと静まり返った。

聞こえる音は外の風が木々を揺らす音と、時計の短針が動く音。

その音を聞いて雑誌を何度も何度も読み返しているうちにハニは知らない間に眠り込んでしまった。

深夜日付が変わったころに、門の外で車が停まりガレージが開き、暫くするとガレージが閉まる音がした。

一言二言会話して、ポーチにつながる階段を上がってくる足音が聞こえて、玄関のドアが開いた。

煌々と点いているリビングの電気、雑誌を広げてソファーで眠っていたハニの姿を見つけた。

「起きていたのか・・・・起きているだろうと思ったけど、案の定待ちくたびれて眠ったんだな。」

「おい・・・おい・・起きろよ、ハニ・・・・・」

う~んと言って寝返りを打とうとするハニを抱き上げて、普段と変わらない顔で二人の部屋に入って行った

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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