最後の雨 19

広げた雑誌をハニの手からそっと取ってみるが、起きそうにもないくらいにぐっすりと眠っている。

時折、楽しい夢でも見ているのかクスクスと笑い、嬉しそうな笑顔になる。

その笑顔を見ると、連日遅くまで研究室での共同研究での疲れなど飛んで行きそうにホッとする。

そう思ったのはこの間までだが、今日はどうしてなのか、その笑顔が恨めしくも思える。

「おい、起きろ。起きろよ、ハニ・・・・・」

身体を揺すっても起きない。

元々寝起きが弱いハニだから、身体を揺すっただけでは、そう簡単には起きることはない。

今日は結構飲んだから、出来ればハニが起きて自分の足で部屋まで行って欲しい。

「・・・・・・ンムニャムニャ・・・・・ス・・・スンジョ君・・・・お帰り・・・・・ゴメンね、寝ちゃって。」

目をこすって何とか笑おうとしているハニを見て、自分のモヤモヤとした気持ちを忘れていつもの自分に戻ろうとした。

「よっぽどいい夢を見ていたんだな。気持ち悪いくらいに、幸せな顔で笑っていたぞ。」

「だって、スンジョ君がいっぱい・・・・フフフ・・・・・いっぱいしてくれたから。」

「夢なんてハニの場合は覚えているはずはないからな。それにオレはお前の夢にまで出て、手助けなんてしたくないからな。」

こんな冷たくて意地の悪い言葉を言いたくはない。

そうじゃない、もっと優しく言わないといけないと思っても出てくる。

「意地悪!」

子供みたいにアッカンベーをするハニは、今のスンジョの気持ちなど判っていない。

ハニどころか、スンジョさえ自分の今のこのモヤモヤした気持ちが判らない。

「遅くなるから起きていなくていいと言っていただろう、冬じゃないから風邪ひくことはないけど自分の明日の授業の事を考えて、待っていなくてよかっただろう。」

自分でも驚くほど冷たい言い方だったことは、ハニがビクッとしたことで気が付いた。

ハニを怒るつもりはなかった、アルコールを摂取し過ぎたせいだ。

ハニがあの男と、楽しそうに歩いていたから、むしゃくしゃして飲んだなんてオレらしくない行動だった。

「あっ!お風呂のお湯を張ってなかったわ、待っていてね、直ぐに張ってくるから。」

「いいよ、シャワーで。」

明らかにハニはオレが怒っていると思ったのか、少し警戒しているように見える。

「でも、お湯に浸かると疲れも取れるし・・・・・・・・」

「いいって言っているだろぅ!!」

怒鳴るつもりは本当になかった。

ハニはオレの為に、急いで風呂に湯を張ると言っているのだから。

「ごめんなさい・・・・・」

謝るのはオレだ。

遅くまで起きていてくれたハニは悪くない。

「アルコールが入っているんだ。湯に浸かったら身体に悪いから、サッとシャワーを浴びてくるよ。」

「スンジョ君・・・・・・怒ってるの?」

部屋を出ようとした時にそう聞いて来たハニの方を振り向くと、目に涙をためていた。

「怒ってないよ・・・・・・飲み過ぎただけだ。」

「そ・・・そぅ・・・・・・・・スンジョ君が帰って来たから、安心して眠くなってきちゃった。もう寝るね。」

返事をしないでオレは部屋を出て行った。

オレが帰って来たから安心して眠くなったわけじゃない。

ハニはオレが怒っていると思って、そう言ったことは判る。

オレを待っている間に転寝をしているくらいだから、安心したら眠くなったなんて・・・・・・・関係ない。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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