声を出して 55
いつもと変わらない街並みも、今はとても輝いて見える。
知らない小さな子供を見れば、いつかは私もあんなに可愛い子供の母親になるのだと思うと、自然と笑顔になれそうだった。
「ハニ、何をニヤついているの?」
「え?ニヤついてなんて・・・・・」
「今が一番幸せな時だからね・・・・」
後部座席に座っているハニとジュリの会話に入って来たグミは、バックミラー越しにからかう様に入って来た。
ハニがニヤつく以上にグミも嬉しかった。 一
目見た時から、ペク家の嫁になるのはハニだと決めていたから。
ひねくれ息子がなかなか自分の気持ちに素直にならなくてヤキモキしていた。
夫が倒れた時にはスンジョが会社の為にと、自分の想いを封じ込めて見合いをした時は、口では絶対にスンジョはハニの元に戻ると言っていても、実際にはそんな自信なんてなかった。
人の気持ちはそれが自分でも判らないのだから、ましてや実の息子とはいえスンジョの心は判らない時も時々あった。
そんな思いが出たのだろうか。
グミは珍しく無意識に思っていた言葉が口から出ていた。
「本当に良かったわ。」
「そうですね、おばさん。」
「え?」
タイミングが良かったのか、ハニたちは車の窓から外を見て、天気の話をしていたのだった。
「昨日までは雨が降って寒かったでしょ?ホテルの中だから空調はちゃんとしているけど、結婚式に来てくれる人たちが、ドレスが雨に濡れたりしたら大変ですよね。」
「そうね・・・・・天気を晴れにしてくれた晴れ女はハニちゃんね。」
「私が晴れ女ですか?」
「そうよぉ~」
あと数時間で嫁と姑と言う立場になるが、この二人には世間でいう嫁姑の問題は全く心配はいらない。
「スンジョは、雨男なの。何か記念になる時にはいつも雨が降っていたし・・・・・」
そう言えばそうだ。
スンジョ君が私と結婚がしたいと言った時も雨だった。
あの少し前は、大雨で・・・・・・そこで・・・・・
「ふふふ・・・・」
またハニの妄想が始まったのだと思ったミナとジュリは、それがハニにとって一番楽しい時の癖だと判っていた。
0コメント