声を出して 61
「え?」
「赤ちゃんよ。」
やだぁ~と言って恥ずかしがるハニの声が、廊下まで聞こえて来た。
先生が結婚してもうすぐお母さんになる。
驚いたのは結婚した相手があのジオ先生だという事。
まぁ、私自身もスンジョ君と結婚する事を、みんなが驚いたのだからそれと一緒と言う事だよね。
部屋のドアがノックされて、ホテル従業員がミナとジュリを呼びに来た。
式が始まるのが近いのだろう。
介添人としての最終チェックをするからと呼びに来たのだった。
「ハニ、行って来るね。」
いつも冷静なミナと違って、ジュリは深呼吸をして緊張しているのが伝わって来た。
「う~緊張をする・・・・痩せちゃいそう。」
「あんたは少しは痩せても大丈夫だけど、私はこれ以上痩せられない。」
久しぶりのミナとジュリの掛け合い。
ミナも緊張をしているが、きっとそれ以上にハニが緊張をしていると思って、ふたりは気を効かせてそう言ったのだろう。
パタンとドアが閉まると、控室にはハニひとりになった。
控室外の人の話し声と足音が、会場となっている部屋の方に行く事が伝わって来る。
頭の中で誓いの言葉を思い出しながら、声に出してブツブツと言ってみ
るが、その声が震えているのが自分でも判った。
大丈夫、大丈夫
誓いの言葉は暗唱じゃなくて、ちゃんと宣言書を持って言うのだから大丈夫と自分自身に言い聞かせて、ただ間違えて言わないようにしようと練習をしていた。
コンコン・・・・
軽いノックの音がしてドアが開くと、ヘラが顔を覗かせた。
「ヘラ・・・・」
「ついに、あのペク・スンジョと結婚するのね・・・・おめでとう・・・」
「ありがとう。」
お互い少し前まで、スンジョを巡って色々あったが、もうこれからはいい友達でいられるとハニは思った。
「私を振って結婚する相手が、ハニ・・・・・あなたでよかったわ。」
「ヘラ・・・・・」
ヘラの言葉は以外でもあり、本気でスンジョのことを好きだった事を思うと気の毒な気もした。
「他の人と張り合って負けたのなら、彼を奪う事は出来ないけど、あなたとだったらいつでも彼を奪う事は出来るから。」
お祝いの席でこんな事を言うヘラは、やっぱり私は好きになれない。
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