最後の雨 31
「あんたがねぇ~」
「本当・・・こんなにドジで採血試験も追追追試になるような看護学生のあんたがねぇ~」
ミンジュやヘウンにヒスン以外の学生たちも、ハニがスンジョと結婚していることを知り、嫉妬をする者や驚いている者が遠巻きに見ていた。
表向きは嫉妬しているようでも、それはその時だけ。
いつまでも妬んだりしている気持の余裕も時間も無い。
___ドンッ!
机をたたく音に、ハニは飛び上がって椅子を倒しそうになるほど驚いた。
「ほら!練習しろよ。」
「いいの?」
「家で練習したんだろ?医学部の優秀な旦那の指導で。」
ギョルはいつにも益して嫌味な言い方をして、シャツを捲り上げた腕を差し出した。
「スンジョ君の腕には・・・・・・出来ない。」
出来ないと言うより、昨晩のスンジョの急な態度の変化で練習をすることは出来なかった。
無愛想で人の機嫌など取ったりしなかったが、優しかったり急に冷たくなったりするスンジョは初めて見た。
「いいから、ほら!やれよ。追追追試なんて前代未聞だ。これ以上出来ないのなら、採血の試験は旦那を連れて来い。」
「それは・・・・・・・」
「何だよ、頼めないのか?」
「だって・・尊いスンジョ君の腕に傷を付けたら。」
「自分の旦那の腕はダメでも、オレの腕はどれだけ傷を付けてもいいのかよ。ホラ、サッサとしろよ。ポイントは今朝お前が言った通りだから出来ないはずがない。」
ギョルの怒鳴り声や悲鳴が聞こえる看護学科の廊下を、スンジョは無表情に歩いていた。
「あの・・・ギョル。お礼に何か奢るから。」
「お礼?」
「うん、お礼・・・・」
「お・わ・び・・・だ。散々オレの腕に針を突き刺したんだからお詫びだろう。見ろよこの痣!」
「はい・・・・すみません、お詫びです。」
「それなら、私たちもそれに便乗しない?」
妙にウキウキとして言うミンジュに、ギョルはギロリと睨んだ。
「何よ、いいじゃない。練習のセッティングをしたのだから。ねぇ~ハニ?」
「うん・・・・」
「それならさ、医学部との合コンをセッティングしてよ。」
「無理よ!」
「どうして無理よ。旦那は医学部でしょ。伝手(つて)があるんだから簡単でしょう。昔から決まっているでしょう、医者と看護師はベストカップルじゃない?」
ミンジュとヘウンの押しに負けそうな、というより最初から家輝見込なんてなかった。
それでもそれがとても大変なことだとは、ハニ以外の人たちは知らない。
スンジョが合コンなど参加することなど、とても考えられないから。
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