声を出して 64

ギョンスの合図で、正面のドアが静かに開いてギドンと腕を組んで立っているハニが姿を現した。

「大きな拍手で迎えてください!!」

いつも大きな声のギョンスは、その場を盛り上げる為にさらに大きな声で言った。

頬を紅潮させたハニが、部屋に一歩近づいて視線を少し下に向けて小さく息を吐き、会場の中に入って来た。


スンジョはハニのドレス姿は試着の時に見たきりで、その時に撮った記念の写真も前撮りの写真も一度も見なかった。

ドアが開いた瞬間、花嫁のメイクとセットされたヘアスタイルのせいか、そこだけが一段と明るい光が刺し込んだように見えた。

声に出して一生言わないだろうと思うが、ダイヤよりもどんな宝石よりもハニが眩しいくらいに綺麗に輝いて見えた。

こんな事をハニに言ったら、きっと大喜びをしないだろう。

なぜなら、オレがハニに綺麗だとか褒める事は今まで言った事が無いし、しない事を判っているから。

完璧にこの式を進行する自信はオレにはあるが、ハニにはきっと完璧にする事が出来ないし、完璧にしたらオ・ハニではなくなる。

オレはハニがどこかでハニらしく、何かを仕出かしてくれる事を予測しているが、どこでハニが何かをするかまでは予測できない。

刺激的な毎日を約束してくれているハニだから、『オレが喜ぶような刺激をしてくれよ』と言ってやりたい。


「スンジョ君、ハニをよろしく・・・」

「はい、お義父さん。」

意外とすんなりとスンジョがギドンを『お義父さん』と言うと、ハニは嬉しそうに微笑んだ。

その時スンジョが何を心で思っていたのか、ハニは知らないし知ることはない。

≪バーカ、オレがおじさんをお義父さんと言っただけで嬉しそうな顔をするな≫

そんな事を言ってハニをからかってみたい気もするけど、目の前にいるハニはオレが初めて見るハニだった。

今日からコイツはオレと一緒に人生を歩いて行く。

良い所も悪い所も、病気の時も健康な時も年老いてからも・・・・・

そう、この誓いの言葉の様にオレはハニの全てを受け止めて行く覚悟はあった。


「それでは指輪の交換です。新郎、新婦の手を取り指輪をはめてください。」

多少の緊張はしているけれど、案外と簡単に指輪をはめる事が出来た。

まぁ、このペク・スンジョが指輪ごときで失敗はしないし、まさか指輪をはめるのを失敗するヤツが・・・・・・

ここにはいた・・・


「おい・・・おい・・・それは右手だ・・・」

案の定、ハニはスンジョの指に指輪をはめる時に、間違って右手を取った。

左手を取って指輪を薬指にはめようとした時、まさかと思った事をハニは仕出かした。

スンジョの薬指にはめそこなった指輪は、音を立てて床に落ちてコロコロと転がって行った。

ハニー's Room

スンジョだけしか好きになれないハニと、ハニの前でしか本当の自分になれないスンジョの物語は、永遠の私達の夢恋物語

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