最後の雨 38
パソコンに集中してレポートを書いていても、笑顔のハニの顔が頭に浮かぶ。
それも看護学科の連中と一緒にいる時の、オレには見せない無防備な笑顔。
その笑顔をアイツにも向けていると思うと・・・・・・
バンッ!!
「ぉおっ、ビックリした。スンジョどうしたんだよ、いきなりパソコンを閉じて。」
「悪い・・・・ちょっとラウンジに行って来る。」
「最近、忙しかったからなぁ。新婚なのに家に早く帰れないし・・・・・奥さんと熱い夜を過ごせなかったもんなぁ。」
高校から一緒のキム・テソンは数少ないオレの友人の一人で、幼いころからの事を知っている。
勿論、女の子の格好をしていたあの頃からの付き合いで・・・・・
「スンジョちゃんも、オレと結婚すればもっと幸せにしてやれたのに。」
「はっ!?冗談でも無理だ。オレは男には興味はないから。」
立ち上がってカバンを取ると、テソンはオレの手を引いた。
「一人でランチも寂しいだろう?オレも付き合うよ。」
結婚式の時には短期留学で、招待も出来なかったが、帰国してからは時々家に来ては食事をしていた。
癪に障るが、ハニとも話がよく合うみたいで、二人で大きな声で笑っていた。
その中に入ろうと思っても、二人の共通の話題は、オレには興味のない分野で・・
「ダメよ。スンジョ君は、アイドルとかには興味がないから。」
「いつも言っているだろう。頭が悪い奴は嫌いだと。」
「バカな私と結婚したじゃないの。」
「そ・・それは・・・・」
「ははは、ハニちゃん、君はスンジョに持っていない物を持っているらしいよ。」
「おい!余計なことを言うなよ。」
フッ・・・・
「やっと笑ったな。ラウンジのコーヒーはハニちゃんの淹れた物程じゃないけど、そんなに不味くはないだろ?」
ハニの淹れたコーヒーか・・・・
最近・・飲んでいないな・・・・・
「ちょうどよかった。ハニほら旦那がいたよ。」
その声に振り向くと看護学科のハニの仲間の一人で、確かミンジュと呼んでいた人物だ。
「スンジョさん?ハニから聞いていると思いますけど、合コンをセッティングしていただけないかと・・・・・」
ハニはオレが何かを言うのじゃないかと思っているのか、ビクビクとした顔をしたが、オレと一緒にいるテソンを見て無理をして笑っていた。
その後ろにいるアイツの顔を見るまでは、普通にしようと思っていた。
「オレが合コンが嫌いなことを知っているだろう!」
怒鳴るように言った言葉は、人が少ないラウンジ中に響いた。
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