最後の雨 40
もう永遠に目覚めないのじゃないかと言うほど、ハニの顔は真っ白で血の気が無かった。
ハニが傍にいなければ、本当の自分になれないことは判っているのに、どうしていいのかスンジョは判らなかった。
息をしているのだろうか。
そんなことは首を見ればわかるのに、バカみたいに不安になって口元付近に手を当てた。
「ス・・・・スンジョ・・・・く・・・・・ゴメンなさい。」
「バ~カ、お前は気を失っていても、オレに謝ってるのかよ。最近のお前はオレに謝ってばかりだな。オレが勝手に一人でイライラしているだけなのに。お前を見ていればそれだけでいいのに・・・・・な・・・・ハニ、お前もそうだよな。オレしか好きになれないことは判っているのに。」
「ペク君、奥さんの具合はどう?」
救護室担当の講師が、用を済ませて戻って来た。
「ええ・・・すみません・・・脈も落ち着いていますし、大丈夫です。」
「びっくりしたわよ。奥さんを抱いて、君が真っ青な顔をして連れて来るんだから。」
担当講師は、机に向かい残務整理を始めた。
もう午後の授業に行かないといけないが、ハニをこのまま残しては行くわけにもいかない。
「授業があるんでしょ?私はもう何もないから、ここで奥さんを見ていてあげるわ。」
“はい”と言ってそのまま、救護室担当の行使にハニを預けて授業に出る気がなかった。
「大丈夫です。後から同じ授業を取っている人に聞きますから。」
講師はそれ以上何も言わなかった。
ハニだって、授業を受けたいはずだ。
「スンジョ君・・・・・」
「ハニ、大丈夫か?」
「私・・・・・・」
「倒れたみたいよ。冷静なペク君が、真っ青な顔をしてあなたをここに運んで来たの。あなたが気が付いたのなら、暫く二人にしてあげるわね。」
担当講師は机の上の本を閉じて、救護室から出て行った。
「スンジョ君、授業が・・・・」
「始まってるな。」
「行って・・・行っていいよ。医学部の勉強は大変だから・・・・・・私も、もう戻らないと皆が心配していると思う。」
スンジョを心配かけないようにとハニは笑顔で応えた。
力ない笑顔だが、ハニにはやっぱり泣き顔より、こうして笑っている顔を見ると心の奥から暖かい。
「合コン・・・・・セッティング・・・・・・・」
「もうしないから、医学部との合コンなんて。」
「違うよ。頼まれているのに断れる性格じゃないよなハニは。一度だけならいいぞ、出ても。」
ハニは嬉しそうに笑った。
ハニにしろ、何があってもスンジョしか興味がないのだから、合コンなんて本当はしたくないが、途中から編入したことで気後れして、切っ掛けになる為の機会としての合コンをセッティングして早くみんなと仲良くしたいだけ。
そんなことはスンジョだって判ってはいるが、ギョルもそれに加わっていると思うと、それが気に食わなかった。
ハニと帰りは一緒に帰ることを約束して、救護室を出てスンジョは授業を受けに行った。
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