最後の雨 41
授業の始まっている看護学科のドアが静かに開いた。
入口は前にしかなく、当然ハニは学生たちの注目を浴びる形になった。
「オ・ハニさん、具合が悪かったと聞いたのですが、もう大丈夫ですか?」
「はい・・・・・すみません。もう、大丈夫です。」
「看護師は体力を使う仕事です。これからは、体力を付けて自分の健康管理もしっかりとしてくださいね。」
ぺコンと頭を下げて、ハニはいつも一緒に授業を聞いているヘウン達の所まで行った。
「ハニが倒れたから、妊娠したのかなって見んなと話してたの。」
「に・・・妊娠なんて・・そんな・・・・」
今までミナやジュリ達からもそんなことを聞かれたこともなかったからハニは恥かしくなった。
「何を恥ずかしがってるのよ。結婚したら出来る確率は高いでしょう。」
「することはしているんだし・・・・あ~羨ましいなぁ~天才ペク・スンジョとア~ンな事もコ~ンな事もしているなんて。」
子供の話なんてスンジョ君としたことなんてなかったし、作らないようにしているわけでもないけど、今の私達には子供なんて出来るわけがないよ。
ここ一か月以上、スンジョ君とは何もないんだから。
「おい・・・・・お前ら五月蝿い。」
相変らずギョルは、授業中に私語を言うと機嫌が悪い。
見かけによらず、ギョルの成績は優秀で、授業はいつも集中していたい方だった。
みんなそれぞれの思いがあって看護師を目指している。
私語や雑談で大切なことを聞き逃しては、大学を出て看護師として仕事をする時に困るのは自分だ。
皆より一年遅れで看護学科に転科し、履修科目もそれを補うために出来るだけ入れるようにしていた。
去年履修していな単元の授業は。家に帰ってからも勉強しないといけない。
ハニにしたら、人生で今が一番勉強をしているのかもしれない。
人の倍以上の時間がかかるハニは、ここで投げ出したいくらいの時もあるが、スンジョと一緒に仕事をしたいと言う下心ではあるが、その目標があるから何とか頑張れた。
採血の試験も、結局は一番最後に合格したが、一歩一歩自分で見つけた目標に近づいている。
「終わった、終った・・・・どこかでお茶しない?」
いつもこういう誘いはヘウンが言い出す。
<お茶しない?>と聞かれても、しないとは誰も言わない。
強引な誘いでもないが、用事がない限り殆どみんなと、どこかで他愛もないことを話している。
「ゴメンね・・・・今日はスンジョ君と帰るから。」
「夫婦でデートね。いいなぁ~ハニは。たまには私と交代して欲しいわ。」
「ダメよ。オカマに代わるくらいなら私よ。でもいいよ、気にしなくて。久しぶりに一緒に帰るんでしょ?」
「うん・・・・」
まだスンジョ君と前のように話せないけど、私はなんだか嬉しくて仕方がなかった。
「その代りね・・・・・医学部との合コン・・・・・考えてくるから。スンジョ君が出てくれるって言ってくれたの。」
「本当?さすがハニ。倒れるほど気にしてくれたから。いいお店を探して来てね。」
冷やかされる声も今は恥かしくない。
スンジョ君と仲直りする切っ掛けがあるのなら、私はスンジョ君の言うとおりに動くだけ。
私はペク・スンジョと言う太陽の周りを廻る、小さな小さな星のオ・ハニだから。
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