最後の雨 45
明日からのスンジョとの旅行の為に、ハニは衣類など旅行に必要な物を用意していた。
最近、スンジョ君と話をしなくなったら、なんだか誰とも話がしたくなくなっちゃった。
私はスンジョ君だけしか見えないから、周りの人の気持ちなんて知らないしどうでもよかった。
旅行に行ってもきっとスンジョ君と何かを話すこともないし・・・・・・・・皆より遅れての看護学科だから、テキストを持って行って勉強でもしようかな?
そうすればスンジョ君と何か話をしないといけないと思わないし、話しかけられても勉強に集中していて気が付かなかったと言い訳が出来る。
ハニはバックの中に、テキストを数冊入れた。
会話も少なくなり、気まずい時間に気を紛らわせるのに勉強をするのが一番いいのかもしれない。
頭に入らなくても勉強をしているふりをしていればいいような気もする。
それとも、ヘウン達に誘われた方を優先すれば良かったかな?
ヘウン達と仲が良くなり始めたし、最近のギョルは前よりも優しくなって来たから、あと三年間一緒に勉強する人たちとの親睦を深めた方がいいのかもしれない。
ガチャリとドアが開いた音で振り向くと、グミが飲み物とお菓子を持って入って来た。
「ノックをしたんだけど、ハニちゃんの返事がなかったから開けちゃったわ。」
「あっ!お母さんすみません。お茶の時間でしたね。スンジョ君にコーヒーを淹れないと。」
立ち上がりかけたハニに座るように手を取ると、グミはミニテーブルの上にトレイを置いた。
「スンジョのコーヒーはいらないわ。自分で淹れていたから。」
スンジョ君、コーヒーも私の淹れた物はいらないんだ。
前は私が何かしていても<コーヒーを淹れてくれ>って言いに来たのに。
「そうなんですか・・・・・スンジョ君が自分で・・・・」
暗い表情になったハニの顔を見上げて、息子夫婦の事を感づいているはずなのにいつもの笑顔でハニに笑いかけた。
「私も一緒にハニちゃんと、お茶を飲もうと思って・・・・・・・いいかしら・・・・」
「はい。」
今までこんな風に話しをしながら部屋でお茶を飲んだのは、昔同居して暫く立った時の高校生の時の一度だけ。
勉強をしている私に夜食を持って来てくれた以来だ。
「おいしい・・・・・」
温かいお茶を美味しそうに飲むハニを見て、グミはハニに聞く事を言い出しやすくなった。
「あなた達二人に何か問題があるのじゃないかなとは思っているけど、私が口に出して聞いていいのかも随分と迷ったの。」
「お母さん・・・・・・」
「正直に言ってね?スンジョと何があったの?あの子は何も言わない子でしょ?聞けば怒るだろうし、聞かないと相談にも乗ってあげられないし。」
「分からないんです。どうしてこうなったのか・・・・きっと私がいけないと言う事は分かっているんですけど、何がいけないのか判らなくて。」
「そう・・・・・・でも、お兄ちゃんも何かで悩んでいるみたいなの。苦しそうな顔しているお兄ちゃんも心配だけど、スンジョの事をいつも好きでいてくれるハニちゃんが最近元気がないのも心配なの。あなた達は本当にお似合いだから、悪い方に行かないように私も協力するから、遠慮しないで小さな事でも相談をしてね。」
グミの言葉に目頭が熱くなる感じがした。
グミにしたらスンジョは実の息子で、母としても息子の悩んで苦しそうな顔を見れば心配になるし、ハニはその息子以上に可愛くて仕方のない嫁で、出来れば実の親子になりたいほどに可愛がってくれている。
心配かけたくない。
父ギドンと同じようにグミはハニにとても大切な人。
自分の事で、父ギドンと同じように悲しませたくないと思っている。
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